シリコンバレー銀行のCEO、破綻直前に360万ドルの株式を売却していた

シリコンバレー銀行CEO、破綻直前に株式を売却

破綻したシリコンバレー銀行のCEOが、破綻直前に360万ドルの株式を売却していたという。

3月10日に破綻したシリコンバレー銀行(SVB)は、リーマンショック以来、米国で最大の銀行破綻となりました。その影響は週明けから徐々に出てくるのか。

しかし破綻する約2週間前の2月27日にSVBのグレッグ・ベッカーCEOが、同行の親会社SVBファイナンシャル・グループの株式12,451株を売却したことが判明しました。ベッカーCEOは1株287ドルで売却し、360万ドルの利益を得ています。

これは証券取引委員会(SEC)に提出された書類で判明しました。

法的には問題なし?

SECの書類によるとベッカーCEOは、もともとSVBファイナンシャルの株式を、1株105.18ドルという半分以下の価格で取得していたという。

3月10日の取引開始前にSVBファイナンシャルの株価は64%急落し、最安値34ドルを記録したため、取引停止になっています。

SECは2000年にインサイダー取引を規制するための「ルール10b5-1」を設け、金融企業幹部による株式の売却をあらかじめ設定した日に限定しており、その予定を事前に通知しなければならないという。

ベッカーCEOの株式売却は、1月26日に提出された取引計画に基づいて行われているため、法的には問題ないと言われています。

「ルール10b5-1」

しかし近年、企業幹部が「ルール10b5-1」の抜け穴を悪用しているとの批判があり、SECのゲイリー・ゲンスラー委員長は新たな規制ルールを提案しました。

それによると、幹部が「ルール10b5-1」を利用して株式を売却する際には、計画の提出から売却まで90日間待たなければならないとされています。

ただこのルールは4月1日から施行されるため、ベッカーCEOのケースでは適用されません。もし新ルールがすでに適用になっていれば、ベッカーCEOは株式を売却する事はできませんでした。

株式売却はSVBが資金調達の計画を発表する前に行われており、もしベッカーCEOがそれを知っていたとしたら倫理的な疑問が残ります。

破綻の影響

早くもSVBに多額の資金を預けていた企業の名前が出ています。やはりIT関連企業が多く、多くのベンチャーやスタートアップ企業がこの後どうなるか懸念されています。

ストリーミング機器メーカーのRokuは、約4億8700万ドルをSVBに預けていると発表しました。この預金は無保険で、同社の株価は10%下落したという。

また、暗号通貨(仮想通貨)「USDコイン」を管理するサークル社が、まだSVBに33億ドルの資金が残っている事が確認されたと発表しました。

SVBが危機に瀕する中、サークル社は3月9日に資金を引き出すために電子送金を開始しました。しかし11日の時点でまだ完全に処理されていない事が確認され、33億ドルのUSDコインの準備金がSVBに残っているとのこと。

すぐに大手仮想通貨取引所のバイナンスとコインベースの両者が、USDコインの換金を一時停止すると発表しました。

USDコインはステーブルコインと言われ、「1USDコイン:1ドル」で取引されるように設計されていると言うが、この話題の後すぐ下落しはじめ、一時は87セントまで下がったという。その後は回復しているようですが。

顧客はIT系に特化

SVBはIT系の新興企業などの支援に特化しており、そうした企業や裕福なエンジニアなど技術者たちが資金を預けているという。

米政府は25万ドルまでの預金を保証していますが、顧客にはそれ以上の預金がある富裕層が多く、25万ドル以上は無保険と見なされるようです。

管財人に任命された連邦預金保険公社(FDIC)は、保険付き預金の口座は週明けに利用できると述べていますが、それ以上預けている口座はどうなるのか。家賃や運転資金などで当座の現金が必要になる企業は困るでしょう。

2021年にニューヨーク市長選挙に出馬した起業家のアンドリュー・ヤン氏は大量解雇を懸念しており、助けなければ多くの新興企業が倒れると警告しています。

買い手はつくのか

ヤン氏はそうした事態を防ぐため、米政府が率先してSVBの引き取り手を探す必要があると述べていますが、現在のところSVBの買い手はいないという。

そんな中ゲーミングハードウェア会社「Razer」のミン・リャン・タンCEOは、ツイッター社がSVBを買収し、デジタルバンクに転換する案を提案しました。

これにイーロン・マスク氏は「そのアイデアにはオープンだ」と返信しています。

まだSVB破綻のストーリーは始まったばかりであり、今後どうなるか注目です。

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