日本と世界の差
オリンピックの女子ゴルフで稲見萌寧(いなみ・もね)選手が念願の銀メダルを獲得しました。男女通じて日本人初です。昔から見てきた者としては、隔世の感があります。
稲見萌寧が銀メダルに輝く ゴルフの表彰台は男女を通じて日本初https://t.co/1EzH5jS4cg
「日の丸を背負ってメダルを取れて本当にうれしい。人生で一番名誉なことだと思う。(五輪は)夢の舞台だったが、いい夢の舞台のままで終わらせることができて良かった」#Tokyo2020 #ゴルフ pic.twitter.com/1Gra29NaV4
— 産経ニュース (@Sankei_news) August 7, 2021
これまで日本人ツアー選手と米国ツアー選手とでは、歴然たる実力の差があったのは誰しも認める事だと思います。
なぜなら米国ツアーは世界中からトッププレーヤーが集まり、しのぎを削っているからです。ヒエラルキーの頂点なのです。そんな場所に、過去多くの日本人選手が男女問わずチャレンジしてきました。しかしごくわずかな選手を除いて、ことごとく散ってきました。また見てきた我々は、ことごとく夢を破られました。
日本国内ツアーでさえ、一時期は韓国選手に凌駕されていたことがありました。これは言っては悪いが、日本の女子ツアーの人気低迷にもつながったような気がします。(現在は黄金世代の出現により解消されましたが)
しかし今回の銀メダル獲得や渋野選手・松山選手のメジャー制覇などにより、日本人選手が海外と肩を並べるようになってきた気がして、ようやくこういう時代が来たかと感慨深いのです。
一人の韓国人選手が世界を変える
ゴルフ界には一つの流れがありました。
2000年代から、米国女子ツアー(LPGAツアー)で韓国選手が活躍しはじめました。それには明らかな理由があります。というのも、朴セリという韓国の選手が1998年に全米女子オープンと全米女子プロの2大メジャー大会で優勝したのです。
思うにこれは大変な遺産を残しました。
なぜならこれに影響を受けた子供達が、後に「パクセリ・キッズ」と呼ばれるようになるのです。パク・インビ、イ・ボミ、キム・ハヌルなど1988年生まれを中心とした世代です。パク・セリがメジャー優勝したとき、彼女たちは10才くらいです。
後にパク・インビ選手は女子メジャー大会を7回も制し、今回の東京五輪でも韓国代表として出場しています。イ・ボミ選手は日本でもおなじみで、2015・16年には2年連続で日本ツアーの賞金女王になっています。
米ツアーを席巻する韓国人女子選手
1988年生まれ世代以外にも、パク・セリが目標だという若い韓国人の女子選手達が続々と出現してきました。
現在、アメリカ女子ツアーは韓国人プレーヤーがトップを争っています。パク・インビはもちろん、コ・ジンヨン、キム・ヒョージュ、キム・セヨン、イ・ジョンウン6、パク・ソンヒョンなどの名前がランキングに挙がります。
一人のスターの出現により、韓国ゴルフ界が変貌したのです。
韓国の国策でもゴルフをサポートしているという話も聞きますが、具体的にどうしているかは調べていないのでわかりません。
それくらい、海外メジャー優勝は威力のある事なのです。
日本のゴルフ事情
最近では日本もジュニア育成にだいぶ力が入ってきているように見えますが、個人的には相変わらず「金持ちスポーツ」のイメージが残っています。親がお金を持っていなければ、子供にゴルフをさせられないのです。
プレー代も練習場もそれなりに費用がかかるし、ウェアや道具にもお金がかかります。いま私が住んでいるあたりの打ちっぱなしの練習場で2~3カゴ打てば、1000~2000円くらいはすぐに飛んでいきます(まあ都内は特別高いですが)。そんな事を週に何日も出来るでしょうか。サッカーのようにボール一個あれば出来るというスポーツではないのです。
しかもゴルフボール一個が数百円です、本番のコースに出ると下手くそであれば林や池に打ち込んで1ラウンドで何個も無くします。一般家庭にそんな余裕があるとは思えません。
そして何より練習場やコースの出迎えはどうですか。子供は山の上の遠いゴルフ場まで重たいゴルフバッグを担いでいけません。親による金銭的・肉体的なサポートが絶対に必要なのです。
雑草からゴルフ選手が出てこない環境
なんとかと言う女の子が一時期メディアで有名になりました。そのお宅では自宅に練習場を作って練習をさせているようです。団地に住む家族にそんな芸当が出来るはずはありません。
今回はフィリピン代表として五輪に出場した笹生優花選手とて、ゴルフの環境がいいからと子供の頃にフィリピンに移住しました。言っては悪いが下級国民にそのようなことが出来るでしょうか。
稲見選手をはじめ現在ゴルフで活躍している選手などは、たぶんですがそれなりの家庭環境の中から出てきているのです。
ちなみに海外の事情はどうかはわかりません。以前アメリカに住んでいた人に聞いたことがあるのですが、当時向こうではパブリックコースなら2~3千円でプレーできると言っていました。仕事前にハーフプレーして、それから出勤するなんて人もいたそうです。
プロになった後
そんなお金のかかる道を頑張ってきたジュニア達も、晴れて一流プロになって活躍さえできれば、そんな借りは一気に取り返せます。
ちなみに松山英樹選手はマスターズを優勝する前の時点でさえ、獲得賞金が30億円を超えていました。しかもゴルフは、アメリカのスポーツの中でも引退後の年金が最も豊かだと言います(PGAツアーの場合)。一説によるとタイガー・ウッズ選手などは、ある年齢から何十億、何百億という年金が貰えるとか。
メジャーリーグではイチロー氏や松井秀喜氏などはある年齢以後から、年間1千何百万が死ぬまで支払われます。亡くなったらその権利が奥さんに引き継がれるようです。日本のプロ野球ではそういう話は聞きませんね。
もちろん、プロになれば誰でも松山選手やタイガー・ウッズのようになれるというわけではないですよね。所詮実力の世界ですので、頂点をつかむのはほんの一握りなのです。ピラミッドの下層にいる選手達は、予選どころか試合の出場権さえ得られないプロ達がごまんといます。
しかも、昔と違ってゴルフはピーク年数がだんだんと短くなっています。昔は40代のプロでも一線で活躍していましたが最近はそうでもないようです。あまりにレベルが上がって、10代20代せいぜい30代前半でないとトップに出てこれなくなってきました。
一流のフェードヒッター
稲見萌寧選手はちょうど黄金世代(1998~99年生まれ)とプラチナ世代(2000~01年)に挟まれた世代です。
彼女たちがジュニアの頃、米女子ツアーで賞金女王になったのは宮里藍選手でした。アイ・キッズになるのでしょうか。
1コ上と1コ下の世代が結果を出していく中で、稲見選手はそれをはねのけるかのように今年に入ってメキメキと頭角を現してきました。それはさながら昇り竜の如くでした。
彼女が今年頭角を現したのは、ボクシングなどで練習に耐えうる肉体を作ったことが大きいと思います。練習で玉をたくさん打つ選手はいますが、疲れない身体を作るのは別物です。肉体の疲れは本番での集中力の欠如につながります。
現時点で稲見選手は、プレーオフでの勝率100%というのがそれを示していないでしょうか。
またパワーがない分ドローで少しでも距離を稼ごうとするのが主流の女子プロゴルフ界の中で、フェードを打つ選手に個人的に目が行きますが、彼女はまさに一流のフェードヒッターでありショットメーカーです。
その一流の業師がパッティングを身につけたのですから強いわけです。
今のところ海外にチャレンジする意向を示していないですが、わがままなリクエストを言わせてもらえるなら、ぜひ海外で活躍して欲しいと思う次第です。
しかし全英では渋野選手に持って行かれ、全米女子オープンでは笹生選手に持って行かれ、五輪では稲見選手に持って行かれた畑岡奈紗選手、なんか同情します。
ではこの辺で失礼します。
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