今、アメリカを揺るがす「プライド月間」とは?――メジャーリーグや米軍までも巻き込む騒動

米海軍とMLB、プライド月間に関する投稿を削除

アメリカ海軍の公式InstagramとTwitterアカウントは、「プライド月間」の開始を称える投稿を削除しました。

これは6月1日に投稿され、翌2日の朝までに削除されたという。理由は説明されていません。

メジャーリーグ(MLB)の公式サイトも、プライド月間をもじったロゴをSNSに投稿しましたが、わずか24時間で削除しました。

プライド月間とは

6月は、プライド月間だという――それって何?

正式には「LGBTQ+ Pride Month」(LGBTQ+プライド月間)といい、世界中のLGBTコミュニティが一堂に会し、自分らしくあることの自由を祝う日だという。

なぜ6月なのか?

これは1969年6月28日にニューヨークで起こったLGBTコミュニティによる抗議活動=「ストーンウォール暴動」に敬意を表し、毎年6月に行われるものだそう。

それまで少なからず差別を受けてきたLGBTコミュニティが、この日ニューヨークのゲイバー「ストーンウォール・イン」で警察から襲撃を受けたことにより反撃し、これがきっかけとなり、全米各地で同性愛解放とLGBTの権利を訴える活動が起こったターニングポイントの出来事だったという。

先ごろロサンゼルス・ドジャースのLGBTイベントにまつわる騒動について書きましたが、このイベントはプライド月間にまつわるものでした。↓

大谷翔平獲得の大本命といわれるドジャースに激震、カーショウ選手らがチームに反発

2023年6月1日

保守派のボイコットの怖さ

いま多くの企業や団体がプライド月間を支持し、そのコーポレート・ロゴをLGBTのイメージカラーであるレインボーにアレンジしています。

こうした動きに保守派は反発しており、LGBTを支持する組織のボイコットを表明しています。

ビールのバド・ライトは、トランスジェンダーのディラン・マルバニー氏をイメージキャラクターに起用したことで保守派のボイコットに遭い、売上が激減しました。

ディズニーはLGBTを支持したことでボイコット運動が起こり、株価が急落し、さらにこのことでフロリダ州とケンカしてその特権を失い、ついには大規模人員削減せざるを得なくなりました。

こうした例に恐れをなしたのか、先日の記事で書いたようにドジャースは双方の板挟みに遭い、キリスト教のイベントも開催せざるを得なくなりました。

テキサス・レンジャースはLGBTを支持しない?

現在、MLBの29チーム(全部で30)が、プライド月間を称えるイベントを計画しているという。そんな中で、唯一テキサス・レンジャースだけが、20年以上もLGBTを支持するプロモーションを行っていないんだとか。

その理由について、レンジャースはこう述べています。

「私たちのコミットメントは、誰もがレンジャーズの野球に歓迎され、受け入れられていると感じるようにすることです。それは、球場でも、試合でも、そして私たちが行うすべてのこと-ファンと従業員の両方に対して-を意味します。」

ではLGBTは支持しないのか?――実はレンジャースは、2022年8月に行われたゲイ・ソフトボールのワールドシリーズのプラチナ・スポンサーを務めていました。まったく支持していないわけではないようです。

またテキサス州という土地柄も関係しているかもしれません。

MLBが削除した理由とは

MLBは、プライドロゴを早々に削除したことについて「ボイコットとは関係ない」と説明しました。

というのも、翌6月2日には「ルー・ゲーリッグ・デイ」を開催するため、最初から計画していた動きだ、と述べています。

ルー・ゲーリッグ・デイとは、37才という若さで亡くなったかつてのニューヨーク・ヤンキースのスーパースター、ルー・ゲーリッグ氏にちなんで、その命日に行われるイベントのことです。

ゲーリッグ氏は筋萎縮性側索硬化症(ALS)により引退を余儀なくされ、そのまま死亡しました。それにちなんで、ALSのことを通称「ルー・ゲーリッグ病」と呼んでいます。

このイベントはALSの認知度を向上し、研究資金を募るために行われているのだそう。

いずれにしろLGBTをめぐる騒動は、アメリカ社会の分断を鮮明にしています。


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2023年4月1日
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