最高裁がトランプ出馬資格を全会一致で承認――各所の反応と今後の展望:スーパーチューズデーは?

Kurt Kaiser, CC0, via Wikimedia Commons

最高裁がトランプの出馬資格を認定

2024年3月4日に連邦最高裁は、コロラド州がドナルド・トランプ氏を投票から排除するとした判断を覆した。最高裁判事は9対0でトランプ氏を投票から排除することは出来ないとの判決を下しました。

これによりコロラド州だけでなくメイン州、イリノイ州の同判断も無効となった。さらに現在係争中の州も取り下げられると思われます。

上記の州は、憲法修正第14条3項を理由にトランプ氏に出馬資格はないと判断していましたが、多くの法律専門家が指摘していた通り、それは認められなかった。

以前から書いてきたようにこの14条3項は、南北戦争で反乱に加担した南軍の高官を再び政府の役職に就かせることを禁じたものです。

昨年12月にコロラド州の最高裁は憲法修正第14条第3項に基づき、2021年1月6日国会議事堂乱入事件におけるトランプ大統領の行為を反乱と見なし、公職に就く資格はないと判断した。

しかしトランプ氏は1月6日事件の弾劾裁判で無罪になっています。「反乱を起こした」と言っているのは反トランプの左派民主党だけであり、なんの証拠もない勝手な決めつけです。

最高裁は全会一致で「州は憲法上、連邦政府の役職、特に大統領職に関して第3項を執行する権限を持たない」としてトランプ氏の選挙資格を認めた。

「法廷の9人全員がこの結果に同意する」

中身は5対4

ただ最終的に9対0であっても、その中身はちょっと違います。

保守系の5人の判事=ジョン・ロバーツ最高裁長官、ブレット・カバノー判事、ニール・ゴーサッチ判事、サミュエル・アリート判事、クラレンス・トーマス判事は、「州は憲法修正第14条の下で、連邦政府役員を投票から排除することはできず、特に大統領を排除することはできない」とし、そのためには「まず議会が法案を可決しなければならない」としています。

「大統領職に関して第3項を州が施行することは、懸念を高めることになる」といい、「その結果、一人の候補者が、ある州では不適格とされ、他の州では不適格とされないということが起こりうる」と述べた。

一方リベラル系のソニア・ソトマイヨール判事、エレナ・ケイガン判事、ケタンジ・ブラウン・ジャクソン判事はこれに同意せず、

「コロラド州が第3項を執行できないことには同意するが、このケースを利用して同条項の連邦による執行の限界を規定しようとする多数派の努力には抗議する」として「われわれは目の前の争点のみを決定し、判決にのみ同意する」としました。

残る1人のエイミー・コニー・バレット判事(一応トランプ任命)は「この訴訟は、コロラド州の有権者が州法に基づいて州裁判所に起こしたものである。連邦法が第3項を施行するための唯一の手段であるかどうかという複雑な問題を扱う必要はない」としました。

つまりざっくりいえば5対4って感じです。バレット判事は一応保守系に分類されてますが、これまでを見るとリベラル系寄りって印象を受けます。

トランプ氏の反応

いずれにしてもこれによってトランプ氏は投票用紙から除外されないことが決まりました。

トランプ氏は最高裁の判断を受けて、

今日の最高裁の全会一致の判決に感謝することから始めたい。非常に重要な判決であり、非常によく練られたものだ。私たちの国に必要な、国をひとつにするための長い道のりになると思う。

彼らは長く働き、懸命に働き、そして率直に言って、100年後、200年後にも語られるようなことに、非常に迅速に取り組んだ。非常に重要なことだ。

有権者はその人物をすぐに選挙戦から外すことができるが、裁判所がそれをすべきではない。最高裁はそれをよく見ていた。それが統一要因になると私は信じている。

ほとんどの州は私を当選させることに大喜びだったが、そうでない州もあり、政治的な理由でそれを望まない州もあった。

さらにトランプ氏は、「バイデンに起訴されている」と述べ、すべての案件が「ホワイトハウスと完全に連携している」と述べた。

「バイデン大統領、第一に武器化を止めよ。自分の戦いは自分で戦いなさい。選挙に勝つために、検察や裁判官を使って相手を追い詰め、相手にダメージを与えようとするな。わが国はそれよりもはるかに大きな国なのだ。」

いいか、私は自分の政策に基づいて勝ちたいんだ。

減税する。金利を下げる。また家を買えるようにする。つまり今日、あなたは家を買うことができない。金利が高すぎる。そういう支持者を獲得したい。

私は戦争を止めたい。ロシアとのウクライナ戦争を止めたい。私が大統領だったら、イスラエルが攻撃されることはなかっただろう。ウクライナは決して攻撃されなかっただろう。

私が大統領だったら、インフレは起きなかっただろう。インフレはエネルギー価格の高騰が原因だった。私はエネルギー価格を低く抑えていた。

私が大統領だったら、エネルギー価格は簡単に維持できたでしょう。プーチンが金持ちになったから、ウクライナとの戦争が起きたんだ。プーチンが金持ちになったからだ。

彼には戦争をする金はないが、私がするなと言ったので、いずれにせよ彼はしなかっただろう。

確かに前政権時代、トランプ大統領は戦争を起こさなかった。

ロシアを抑え、中国を牽制し、北朝鮮の金正恩と対話し、中東和平を成立させた。

しかしそれを気に入らない裏の人たちがいる。

コロラド、メイン各州務長官の反応

最高裁に全会一致で否決されたコロラド州のジェナ・グリスウォルド州務長官は反発した。

「連邦最高裁が、連邦候補者に対する憲法修正第14条第3項を施行する権限を州から剥奪する判決を下したことに失望している。コロラド州は、宣誓を破る反乱軍を投票から締め出すことができるはずだ」とXに投稿しました。

しかしこの投稿には、「9対0なのに」「共産主義ファシスト」「お前は民主主義に対する真の脅威だ」「あなたがトランプを助けた」「こいつは解任される必要がある」など辛辣なリプが付いています。

またメイン州のシェンナ・ベローズ州務長官は、トランプ氏を除外する判断を撤回しました。

「法律と憲法に従うという私の宣誓と義務に従い、アンダーソン判決に従い、私はトランプ氏の第一次請願を無効とする決定をここに撤回する。」

「修正された判決の結果、2024年3月5日の大統領予備選挙でトランプ氏に投じられた票はカウントされます。」

民主党議員

最高裁判事が「まず議会が法案を可決しなければならない」と述べたことに対し、さっそく民主党のジェイミー・ラスキン議員はエリック・スウォルウェル議員らと共に、トランプ氏を大統領選の投票対象から外すための「法案復活に取り組んでいる」と発表しました。

共和党のマイク・ジョンソン下院議長はこの動きを非難し、「民主党はしっかりしなければならない。この国では、次の大統領を決めるのは、裁判所でも議会でもなく、アメリカ国民だ。」

スーパーチューズデー

現地3月5日のスーパーチューズデーには、15州と1準州の予備選が行われます。(最高裁はこれに間に合わせるよう判断した)

アラバマ州、アラスカ州、アーカンソー州、カリフォルニア州、コロラド州、メイン州、マサチューセッツ州、ミネソタ州、ノースカロライナ州、オクラホマ州、テネシー州、テキサス州、ユタ州、バーモント州、バージニア州の15州、それとアメリカ領サモアの準州。

共和党の大統領候補指名を受けるためには過半数の1,215人の共和党代議員を獲得しなければならないが、現在のところトランプ氏は244人を獲得しています。

一応ライバルのニッキー・ヘイリー氏は43人で、ほぼ勝ち目はない。

スーパーチューズデーでは共和党の代議員の3分の1以上に当たる865人が争われるものの、トランプ氏が全員獲得できたとしてもまだ足らない。

最短でも3月12日に行われるジョージア州、ミシシッピ州、ワシントン州、ハワイ州の結果を待たなければなりません。

注目のカリフォルニア州

実はスーパーチューズデーで注目される州があります。カリフォルニア州です。

というのも昨年死去したダイアン・ファインスタイン連邦上院議員の空いた議席を争う候補者の予備選が行われるからです。

カリフォルニアはどうせ民主党でしょ?と思うのが普通なのですが、実は支持率を上げている共和党候補がいる。元MLBロサンゼルス・ドジャースやサンディエゴ・パドレスで活躍したスティーブ・ガーヴィー氏です。

ガーヴィー氏は現役時代、10回オールスター選出、ゴールドグラブ4回、1974年ナ・リーグMVPなど輝かしい成績を収めた。

世論調査では有権者の27%がガーヴィー氏を支持し、アダム・シフ下院議員が25%、ケイティ・ポーター下院議員が19%で続いているという。

スティーブ・ガーヴィー

FOXニュースの番組に出演したガーヴィー氏は、有権者はカリフォルニア州の民主党政権に「怒っている」と主張した。

カリフォルニア州はそれまで共和党だったのが1992年に民主党にひっくり返って以来、ずっと民主党が支配しているゴリゴリのブルーステートです。

しかしギャビン・ニューサム州知事がそれまで黒字だった財政を大赤字にし、増税が行われている。さらに左派政治によって犯罪が増加し、麻薬が蔓延し、ベイエリアでは街が崩壊状態になっている。

そんな中で億万長者やハリウッドのセレブたちがカリフォルニアから逃げ出した。

ガーヴィー氏はそんな民主党の支配に「彼らはもう我慢できないだろう」と語り、「国民を失望させたキャリア政治家たちは、今こそ変革の時であり、新しいアイデアを持ったフレッシュな若手の登場が必要なのだ」と述べた。まあ現在75歳のガーヴィー氏が若手かどうかは別にしておく。

いずれにしてもこの3月5日のスーパーチューズデーで選ばれた上位2名が、11月の本選挙に進むことが出来ます。

連邦上院議会は現在

・民主党51議席(民主党48+無所属3)
・共和党49議席

なのでこの争いも注目です。

上院は政府要職の人事権があるので、もしトランプ政権が樹立した場合に共和党が上院の過半数を占めていれば、閣僚の人事がスムーズになる可能性がある。

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