『新証言』マルコムX暗殺にニューヨーク市警とFBIが関わっていた?――遺族が再調査を要求

マルコムX暗殺から56年目

ちょうど56年前の1965年2月21日、アメリカの黒人解放運動活動家のマルコムXが暗殺された。

マルコムXについては1993年にデンゼル・ワシントン主演で映画化(『マルコムX』スパイク・リー監督)されており、数々の関連図書も出ているので詳しくご存知の人も多いのでは。

キング牧師とは対象的に攻撃的な言動が注目を浴び、マスコミの寵児となった。

暗殺されて56年経ったこの日、元ニューヨーク市警の潜入捜査官の書簡が公開され、物議を醸している。

その書簡では、マルコムXの暗殺にFBIとニューヨーク市警が関係してる事が記されているからだ。

若い頃

マルコムX(本名マルコム・リトル)は、6才の時に人種差別主義者によって父親を惨殺され、母親は精神を病んでしまう。それが元で里子に出されたが、中学を卒業した後はさまざまな犯罪に手を染めたという、

20代の時に刑務所に収監中にブラック・ムスリム運動に出会い、その教えを熱心に勉強したという。彼のトレードマークのメガネは、消灯後も勉強したため視力が落ちたことによるものだ。

その後、NOI(ネーション・オブ・イスラム)に入信、釈放後から「マルコムX」という名前を名乗りだしている。

当時ボクシング世界チャンピオンだったカシアス・クレイが、マルコムXの思想に触発され、NOIに入信してモハメド・アリに改名したのは有名な話。

NOI脱退後

1962年に、NOIの指導者イライジャ・ムハマドが10代の女性に子供を産ませた事がわかり、マルコムXが反発した。するとNOIは彼を暗殺しようとしたが失敗し、けっきょくマルコムXはNOIを脱退することになった。

脱退後、マルコムXは中東に向かい、正統派のイスラム教に感銘を受けたという。

その後、新たに宗教団体「ムスリム・モスク」と、政治組織「アフリカ系アメリカ人統一機構(OAAU)」を立ち上げ、リーダーとして活動。黒人革命を提唱した。

マルコムX暗殺事件

1964年以来NOIとの対立が激しくなり、危険な目にあってきた。

NOIに潜入したFBIの捜査官が、マルコムXが暗殺対象になっていることを報告すると、以後彼はボディガードなしでは外出しなくなったという。

1965年2月14日、NOIのメンバーによりニューヨークの自宅が爆弾によって攻撃されたが、本人と家族は無事だった。

その一週間後の2月21日、マルコムXがマンハッタンにあるオードゥボン舞踊場で演説していた時、凶弾に倒れる。21発の弾丸を受け、コロンビア長老教会病院に搬送されたが死亡が確認された。

殺人に関わった3名が逮捕、いずれもNOIの信者で、3名とも第一級殺人で有罪判決を受けて服役したが、仮釈放されている。

元NY市警潜入捜査官の書簡を公開

生前から、マルコムXは自分の命を狙っているのはNOIだけでなく、FBIやCIAも協力しているのではないかと疑っていたという。

その死から56年後、遺族が書簡を公開し事件の再調査を要求した。それによるとニューヨーク市警とFBIが、マルコムXの殺害に共謀していたことを示す内容が書かれている。

マルコムX暗殺の日だ。これは死の間際に、元ニューヨーク市警の潜入捜査官レイ・ウッドが告白し家族に伝えたもので、現在は公開されている。

書簡の内容――FBIとNY市警が関与?

元ニューヨーク市警レイ(レイモンド)・ウッド氏は2020年11月に亡くなっているが、死の床でこの内容を告白したとされ、ウッド氏の死後、彼のいとこが公開を許可したという。

米現地2月20日に、マルコムXの娘3名とウッド氏の家族が記者会見を開き、この書簡を公開した。

【書簡の内容】

  • 私レイモンド・A・ウッドは、1964年4月から1971年5月までニューヨーク市の黒人覆面警察官であった。
  • 後で考えると、黒人の地位向上のためには嘆かわしく有害な作戦に参加していた。
  • 仕事は市内の公民権団体に潜入して、犯罪の証拠を見つけることだった。
  • 同僚の残虐なやり方を見て辞めようとしたが、任務に従わなければマリファナとアルコール売買の罪を着せて逮捕する、と脅されていた。
  • 私の任務はマルコムXのセキュリティの中心人物2名(ボウ氏・サイード氏)を、犯罪に巻き込む事だった。そうすれば二人はFBIに逮捕され、警備が手薄になる。
  • 1965年2月16日に自由の女神の陰謀が実行され、二人が逮捕された。その時はまだマルコムXが狙われているとは知らなかった。
  • 1965年2月21日にオードゥボン舞踊場に行くよう命じられたが、現場を離れたすきに身元がバレてしまった。
  • トーマス・ジョンソンは後に逮捕され、私を庇うためとFBIやニューヨーク市警の秘密を守るため、不当な有罪判決を受けた。
  • この全文をいとこのレジナルド・ウッド・ジュニアに託し、死後まで保管するよう依頼した。
  • この情報を受け取っていただいた方に、私が重い心境で秘密を抱えていたこと、この件に参加したのを後悔していることをご理解いただきたいと願っている。

FBIコメントせず

会見でマルコムXの娘の一人イリヤサ・シャバズ氏は、何十年にもわたって疑念を抱えて生きてきた、と語っている。

「あの恐ろしい悲劇の背後にある真実を、より深く知ることが出来る証拠があるのなら、徹底的に調査されるべきだ」

これに対してニューヨーク市警は、この事件に関連する全ての証拠は引き渡し済みである、と回答したとのこと。

一方FBIは何もコメントしていないという。