バチカンが性転換を批判――LGBT協会の衝撃的な内部文書がリークされる

Jebulon, CC0, via Wikimedia Commons

バチカンが新たな指針書『Dignitas Infinita』を発表

皆既日食のタイミングで、バチカン(ローマ教皇庁)が新たな指針を示す文書『Dignitas Infinita(ディグニタス・インフィニタ)』を発表しました。

その中で、性別適合手術つまり性転換は「人間の尊厳を脅かす」との姿勢を表明しています。

同日(現地4月8日)にドナルド・トランプ氏は中絶に関する自身のスタンスを発表し、これも大統領選挙に向けて論議を巻き起こす火種になるのかなあという印象ですが。

やはり日食+カイロンは何かをもたらしたのか。これら2つの出来事はおそらく左派と右派の対立を煽るものとなっていくのでしょう。

そんな中さっそくバイデン政権のホワイトハウスはバチカンの指針に反発し、カリーヌ・ジャン=ピエール報道官はLGBTコミュニティを擁護することをあらためて確認しています。

一方で全米大学体育協会(NAIA)は、トランスジェンダーの選手が女子スポーツに出場することを全面的に禁止する方針を発表しました。

やっぱり水瓶座時代ですね。平和で穏健な世の中は望むべくもないかもしれない。

教会内の分裂

以前このブログで書いたように、前ローマ法王の故ベネディクト教皇は死後に出版された本の中で「カトリック神学校でゲイのクラブが運営されている」と告発して物議になりました。

これに対して現法王フランシスコ教皇はゲイのクラブを認める発言をし、「同性愛は犯罪ではないものの、罪である」と、何言ってるかわからない説を述べたのです。

フランシスコ教皇はグローバリストと言われているのでその発言は驚くことではないし、当然ながら保守派のカトリック信者たちとは対立の図式が鮮明になりました。

ベネディクト教皇は生前、フランシスコ教皇とは不仲だったと暴露されており、教会内で伝統保守派と進歩派という2つの派閥の存在が明確になったのです。

昨年6月のLGBTプライド月間の時にロサンゼルス・ドジャースが、キリスト教を冒涜する過激LGBT団体を表彰したことで保守派の司教がドジャースをボイコットするよう呼びかけ、フランシスコ教皇はこの司教を解任するという騒動が起こりました。

そんな対立構造がある中で教会が発表した『Dignitas Infinita』で、性転換を否定したのは興味深いと言えるのでは。

ローマ法王フランシスコ教皇、ゲイのクラブを認める発言――「同性愛は犯罪ではないが、罪である」

2023年1月26日

前ローマ法王ベネディクト教皇による衝撃の暴露本「神学校でゲイのクラブが運営されている」

2023年1月25日

Dignitas Infinita

ラテン語で「無限の尊厳」を意味する『Dignitas Infinita』は、発表に先立ってフランシスコ教皇の意見を取り入れながら何度も改訂されたという。

その中には中絶、人身売買、貧困、安楽死、死刑などあらゆる事に言及しており、ジェンダーに関する事も含まれる。

しかし実は『Dignitas Infinita』は、LGBTの人を擁護する姿勢は崩していません。この中で、

「性的指向にかかわらず、すべての人はその尊厳が尊重され、配慮をもって扱われるべきであり、一方、不当な差別のあらゆる兆候は注意深く避けられるべきであり、特にいかなる形態の攻撃や暴力も避けられるべきである」とし、

「ある場所では、少なからぬ人々がその性的指向だけを理由に投獄され、拷問され、さらには生命を奪われているという事実は、人間の尊厳に反するものとして糾弾されるべきである」と、ジェンダー差別を批判しています。

これは一部の国でLGBTを罪とする法律が制定されていることを指していると思われます。その上で、

「すべての人間は、その存在そのものに内在する無限の尊厳を有し、その尊厳は、その人が遭遇しうるあらゆる状況、状態、事態において、またそれを超えて、優勢である。」とし、人間の理性だけがこの原則を認め、それが「人間の優位性と人権の保護の根底にある」と述べた。

性転換は「許されないイデオロギー」

一方でカトリック教会はジェンダー変更を”許されないイデオロギー”とした。

性転換手術について、「個人の不変の性別を変えようとする試みは、結局のところ神をもてあそぶ見当違いの試みである」と主張しています。

その科学的一貫性が専門家の間でかなりの議論の対象となっているジェンダー論について、教会は、肉体的・精神的なあらゆる次元における人間の生命は、神からの賜物であることを想起する。

この賜物は、感謝の念をもって受け入れられ、善のために役立てられるべきである。

ジェンダー論が規定するように、人間の生命は賜物であるというこの基本的な真理から離れて、個人の自己決定を望むことは、自分自身を神とする古くからの誘惑に譲歩することになり、福音において私たちに啓示された真の愛の神と競争することになる。

『Dignitas Infinita』
https://press.vatican.va/content/salastampa/en/bollettino/pubblico/2024/04/08/240408c.html

性転換手術の実態を暴露する文書がリーク

実は1ヶ月ほど前、性転換手術に関する衝撃的な文書がリークされました。『Dignitas Infinita』がこの文書を参考にしたかはわかりませんが、間違いなく物議を呼ぶものでした。

3月4日にリークされた、世界トランスジェンダーヘルス専門家協会「WPATH」から流出したというこの内部文書は、性転換医療に疑問を投げかけるものでした。

通称「WPATHファイル」と言われるこの内部文書は、以前「ツイッターファイル」を暴露したジャーナリストであるマイケル・シェレンバーガー氏によってシンクタンク「エンバイロメンタル・プログレス」を通じて公開されたものです。

シェレンバーガー氏いわくWPATHは、米国医師会、内分泌学会、米国小児科学会そして世界中の医師から信頼を寄せられているジェンダー医学の世界的権威だという。

しかしこのWPATHの内部ファイルは、この組織がエビデンスに基づく医療の基準を満たしていないことを明らかにしており、そうして行われたジェンダー医療が”犠牲者たちを生み出している”ことをWPATH自身が把握している事を示すものだという。

その被害は、不妊手術、性機能の喪失、肝腫瘍、死亡などが含まれる。

にも関わらず、彼らはジェンダー医療を実行し続けているというのです。

ファイル
https://static1.squarespace.com/static/56a45d683b0be33df885def6/t/6602fa875978a01601858171/1711471262073/WPATH+Report+and+Files111.pdf

内部文書は医療過誤を示している

WPATHは、自ら「トランスジェンダーの健康に専念する学際的な専門家および教育組織」と称しており、性別に違和感を持つ人々をどのように支援するのが最善かについて、専門家のコンセンサスを明確に示すケア基準(SOC)を作成していると謳っています。

しかしその大仰な看板とは裏腹に、専門家団体というわけでもなく(一部医療関係者はいる)、会員のかなりの割合がLGBT活動家で構成されているという。

このたびリークされたWPATHファイルは、電子メール、文書、82分の動画からなる241ページの報告書ですが、その中で「子供と脆弱な成人に対する広範な医療過誤」を示すものでした。

シェレンバーガー氏は「ジェンダー医学と呼ばれるものが科学でも医学でもないことを示している」と述べ、インフォームド・コンセントを与えていないとしています。

※インフォームド・コンセント=「医師と患者との十分な情報を得た(伝えられた)上での合意」

子供がインフォームド・コンセントを理解するのは難しい

WPATHは、子どもたちが思春期ブロッカー(ホルモン阻害剤)、異性間ホルモン剤、そして性自認に沿うよう身体を変える手術を受けられるようにすることを提唱し、これについて両親がインフォームド・コンセントを提供できることを示しています。

しかしWPATHファイルによれば「同意が不可能であることを認めているメンバーもいる」と書かれており、「自分たちの実践は即興に基づくものであり、子どもたちはそれを理解することができず、同意のプロセスは倫理的なものではない」と暴露されている。

また動画の中で内分泌学者のダン・メッツガー博士は、14歳の子供に説明する事を「彼らは気にしない。彼らは死なない。永遠に生き続けるんだろう?だから(14歳の子供から)インフォームド・コンセントを得るにはまだ問題がある」と述べています。

別のメンバーは「私たちはそれについて話そうとするのですが、ほとんどの子供たちは、本当に、本当に、本当に、真剣にそれについて話せるような脳の状態にはないのです」と述べ、未成年の子供にはまだ理解できないことを示した。

「ほとんどの子供たちは、そのことを真剣に話せるような脳の状態にはありません」↓

その一方でWPATHのメンバーは、アメリカでの性転換手術は「高校最後の年の夏がベストだと思う」と述べている。↓

しかし16歳の患者に2つの肝臓腫瘤が見つかった事も報告されています。↓

性機能を失う

さらにファイルによれば、性転換手術の被害者の多くは不妊になったことを後悔しているという。しかしそれに対する医師たちの反応は冷淡なのだとも。

通常、この手の手術は不可逆(元に戻せない)なものです。

また患者の多くは、オーガズムを経験することを含む性機能を失っているという。そのため、性的快楽を奪われるだけでなく、恋愛関係を長続きさせる能力も著しく損なわれているとのこと。

「性医学患者の多くは、オーガズムの経験を含む性機能を失っている」↓

また一部の性転換患者にとっては、それよりも悪い結果が待っている可能性が示された。

ファイルによると、8~10年間テストステロン(男性ホルモン)を投与した後、肝臓癌を発症した例が報告されているという。

これはホルモン治療と関連しており、患者は数ヵ月後に死亡したとのこと。

「テストステロンを8~10年投与した後、彼らは肝癌を発症し・・・2~3ヵ月後に死亡した」↓

メンタル疾患

ファイルの中でサンフランシスコの外科医トーマス・サターホワイト医師は、精神的に疾患のある患者について報告しています。

「術後、我々のケアチームにとって危険な脅威となった患者がいた」↓

この患者には重度のメンタル障害があり、それまで表面化しなかったものが、性転換治療後に表面化したという。しかし彼らのチームは事前に見逃していた可能性もある。

シェレンバーガー氏は、WPATHファイルの中でジェンダー医学を行った医師たちが、繰り返し精神疾患や精神障害が、「性同一性障害と誤診された」という証拠を放棄していると言っています。

実際はメンタル障害なのに、それを性同一性障害だと診断し、治療を施してしまうという。

「何かがおかしい・・・統合失調感情障害か統合失調症ではないかと疑っている」↓

医療過誤を患者のせいにしている

「患者は、医学的な決定、特に永続的な影響を及ぼす可能性のある決定について、自ら積極的に責任を負う必要がある」↓

WPATHファイルには、メンバーやWPATHのマーシ・バウアーズ会長が、被害者である患者を非難している証拠が示されているという。

シェレンバーガー氏は、「WPATHのメンバーが自分たちの虐待をいかに柔軟に合理化していたかに衝撃を受けるかもしれない」と述べている。

「WPATHのメンバーたちは、後悔と離脱の高まりに直面しながらも、今起きていることを一度の”移行”ではなく、”ジェンダーの旅だ”と表現する。↓

そしてインフォームド・コンセントで合意できなかったWPATHのメンバーは、それを「プロセス」であり、「進行中の会話」であると捉え直して正当化しているとか。

「インフォームド・コンセントとは、プロセスであり、ある時点での1回の会話ではない。その会話は、メディケイドと介入を開始した時点で止める必要はない。その会話は、介入が行われた後でも継続することができる」

「現在起こっていることは、率直に言って、倫理的に必要なことではない。」「多くのWPATHメンバーは、医療過誤の証拠を放棄している。」

「しかし、インフォームド・コンセントの欠如を本当に心配している人もいる。」↓

性転換手術はまだエビデンスに基づいていない

奇しくも今回のファイル流出によって、性転換手術がまだエビデンスに基づいておらず、危険なものだということが明らかになりました。

しかし英メディアのガーディアンは、イギリスにとってWPATHの見解は重要だと述べています。

何年もの間、WPATHとその基準は、英国医師会や一般医療評議会を含む多くの医療団体によって、トランス医療の「ベストプラクティス」の情報源として引用されてきたという。

https://www.theguardian.com/commentisfree/2024/mar/09/disturbing-leaks-from-us-gender-group-wpath-ring-alarm-bells-in-nhs

ただ今度どうなるかは議論の余地がありそうです。

いずれにしてもバチカンの『Dignitas Infinita』は宗教的な面で性転換に異議を唱えたものであり、そこにたまたまWPATHファイルがリークされたことによって、肉体的なリスクを伴うことが暴露された。

ホワイトハウス報道官のコメントからもわかるようにバイデン民主党はLGBTを推進しており、また医療面でも性転換治療を支援しています。

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2023年4月1日
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