ニュージャージー州の化学工場で何が作られているか
なかなかスパイシーな話題が出てます。
ニュージャージー州メイウッドの静かな住宅地域に、ステパン社が運営する化学工場があるという。
この工場は、コカインの原料となる「コカの葉」を米国に輸入する独占ライセンスを持っているのだそう。このライセンスは、他のどの会社にも付与されていません。
そしてこのライセンスはDEA(麻薬取締局)が発効しています。
工場はコカの葉を使って何を製造しているのか?――ある世界的に有名な清涼飲料水に使われるシロップの成分を製造しているという。
その清涼飲料水とは「コカ・コーラ」です。
Coca-Cola makes cocaine in this secret New Jersey factory https://t.co/ZX21AMMPC1
— Daily Mail Australia (@DailyMailAU) April 1, 2023
コカ・コーラ社はコカの葉を自由に輸入している
ステパン社の工場は、100年以上にわたってコカの葉を加工してきたと言われています。
コカの葉はコカインの原料となる植物で、1921年以来、米国への輸入は禁止されているという。唯一輸入が許されているのがステパン社ということです。
このライセンスにより、コカ・コーラ社はこの禁止薬物を自由に輸入してきました。この間、世界中の各国がコカを取り締まろうと努力してきた中で、同社は奇跡的に規制を免れてきたわけです。
工場でコカの葉は、コカインの成分を抜く、いわゆる「デコカイン化」されたものを作るために使われているとのこと。デコカイン化された成分は、コカ・コーラのあの独特な風味を醸し出すという。
その製造過程において、副産物として残ったコカイン成分は、全米最大のオピオイド(麻薬性鎮痛剤)製造メーカーMallinckrodt(マリンクロット)社に売却され、医療用麻痺の製造に使われていると報じられています。
ニューヨーク・タイムズは1988年に、ステパン社がペルーやボリビアなどから毎年56〜588トンのコカの葉を輸入していると報じています。
nyt 1988: how coca-cola obtains its cocahttps://t.co/edcDWTLfGS #tbt pic.twitter.com/a5hNSabNim
— Ben Adlin (@badlin) June 3, 2022
コカ・コーラのルーツ
コカ・コーラのレシピは企業秘密だと言われていますが、あの風味は独特です。
1886年に、ジョージア州アトランタの薬剤師だったジョン・ペンバートン氏が、当時フランスで人気のあったコカ・ワイン(コカの葉のエキスをボルドーワインに混ぜて作った清涼飲料)を手本にして作ったのがコカ・コーラのルーツだという。
ペンバートン氏は酒税法の規制を避けるため、コカの葉のエキスをワインではなく、シュガーシロップで割ることにしました。さらに、コカ・コーラの名前の由来となったコーラナッツのエキスと、カフェインも加えています。
そして信じられないことに、1903年に製造方法が変わるまで、コカ・コーラにはかなりの量のコカインが含まれていたのです。その分量はグラス1杯あたり推定9mgだという。これは英語版Wikipediaに普通に書かれています。
そのオリジナルのコカ・コーラは、有名な宣伝文句「おいしい。爽やか。爽快。元気が出る。」として人気が出ました。
コカ・コーラが登場した19世紀後半、当時の無秩序な医薬品市場には、モルヒネ、アヘン、ヘロイン、コカインなどの麻薬を含む特許医薬品が溢れかえっていたとのこと。
コカ・コーラの「コカ」はコカの葉
米国でコカインが違法とされたのは1914年で、それまでこの物質にはさまざまな(時には疑わしい)医療用途があったんだとか。
コカインは、頭痛、疲労、便秘、吐き気、喘息、さらにはインポテンツまで、さまざまな病気に効果があると一般的に信じられていたようです。
しかし1903年には麻薬に対する世論の流れが変わり、コカ・コーラ社の当時の経営者アサ・グリッグス・キャンドラー氏やフランク・M・ロビンソン氏らが、同社の飲料からほぼすべてのコカインを除去することに成功したという。
ただし「コカ・コーラ」という商品名を保護するために、シロップの成分としてコカエキスを一定量残していました。それは商標上の問題があったからだとか。(コカの成分が入っていなければ「コカ」は名乗れない)
(参考)Does Coca-Cola contain cocaine? /LIVE SCIENCE
輸入免除ライセンスは現在まで継続中
なぜ今になってこの話題が浮上したのか。
それは今年1月30日に、ステパン社がDEAにライセンスを継続する許可に成功したからだという。
米国では1914年にハリソン法によってコカインの輸入が禁止されますが、1922年にメイウッド・ケミカル・ワークス社については免除される条項が設けられました。このメイウッド社を1959年に買収したのがステパン社です。
以来、この免除ライセンスは現在まで継続されています。
同社が輸入するコカの量がどれくらいかは不明ですが、1980年台には年間500t以上のコカの葉が入っている可能性があると報告されていました。
500tの葉から200万グラムのコカインが生産される可能性があり、その価値は20億ドル程度になるという。
デイリーメールは付近住民の話として、この工場は早朝から煙を発生することがあり、時には夜遅くまで続くと報じています。その匂いは時々焦げ臭く、非常に強い匂いになることもあるんだとか。
「当初は何が起こっているのか分からなかったが、噂は聞いていた」
また工場にはパトカーが常駐していることが多いという。
オピオイド問題
上に書いたように、製造過程で残ったコカイン成分は、オピオイドに使用されています。
オピオイドの麻薬性鎮痛剤は、中毒症状を起こすことで近年問題になっています。ケシから抽出されるヘロインやモルヒネも含め、オピオイドと総称されています。
アメリカでは1996年以降、年間40万人以上がオピオイド(フェンタニル)の過剰摂取によって死亡しているという。
オピオイドの過剰摂取で死亡した有名人
2016年4月21日:ミュージシャンのプリンス
2017年10月2日:トム・ペティ
2019年12月8日:ラッパーのジュース・ワールド
日本ではTVのコメンテーターとして登場していたおおたわ史絵医師が、母親がオピオイド中毒だったと告白しています。おおたわ氏の母親は看護師で、父が開業医だったことからオピオイドが手に入りやすかったという。
2020年10月、マリンクロット社は、オピオイドによる10億ドル以上の訴訟に直面し、連邦破産法第11条の適用を申請しました。
Major opioid maker Mallinckrodt files for bankruptcy amid lawsuits https://t.co/BH9rEZKK5L pic.twitter.com/s8OMe6YTEs
— The Hill (@thehill) October 12, 2020
デイリーメールはニュージャージー州の工場やコカの葉の輸入について、ステパン社およびコカ・コーラ社にコメントを求めたというが、回答は得られなかったとのこと。
水瓶座の風が吹く――。
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