先日、山本KID徳郁氏が亡くなり、日本の格闘技の象徴のような存在が一人消えた。その時の記事で書いたが、彼は冥王星が射手座の時代に輝いた選手である。当時はガチンコの格闘技が全盛だったが、今はそれもトーンダウンし、格闘技界は違う流れになっている気がするがどうだろう。今回はそのあたりを掘り下げてみる。
そして文末に書くが、それは一般社会にも通じるものなので、格闘技に興味がない人にも一興あるかと思う。
格闘技の歴史は冥王星の動きとともに
武道やボクシングなどは除くが、これまでプロ格闘技の歴史は、冥王星の動きになぞらえると興味深い事がわかる。それぞれの時代を通じての、プロレス→本格的ガチンコ→プロレス回帰という流れは、まさに冥王星が映し出すかのようである。
各々の転換期には象徴的な出来事が起こり、記憶と歴史に刻まれていく。
はじめに断っておくと、私自身はそれほど格闘技に詳しいわけではなく、以下の流れはamazonビデオ番組の「有田と週刊プロレスと」を参考にさせてもらっている。このネット番組における、くりいむしちゅー有田哲平氏の格闘技に対する造詣は、実に詳しく面白く、格闘技ファンでなくてもついつい引き込まれる秀逸なコンテンツだと思う。
その証拠に、レビューにはプロレスや格闘技を何も知らなかった女性まで絶賛しているほどだ。amazonプライム会員なら無料で見れるのもありがたい。
この番組を参考に、私なりの占星術の時代考察をミックスしてみた。
冥王星・天秤座時代――偏見がなくなる
まず、それまでのジャイアント馬場・アントニオ猪木時代から、1980年代に入ると初代タイガーマスクのデビューや、長州力氏の「俺はお前の噛ませ犬じゃない」発言後のブレイクなど、それまで偏見をもって見られがちだったプロレスが、徐々に世の中に広く注目されていくのである。
この時にプロレスファンになった者は多く、今は見ないけどその頃は夢中で見てた、という人は多いではないだろうか。
時は天秤座冥王星時代のことであり、偏見を持って見てはいけない、という天秤座の特徴になぞらえることができるだろう。
冥王星・蠍座時代――同盟の時代
1984年に冥王星が蠍座に入る。
蠍座は経済も示すので、景気が上がりバブル期へと向かう。
一方プロレスは、この頃から「なんとか軍」「なんとか戦士」などという選手同士の同盟の時代になっていく。個対個はもちろんあるが、そのベースとなるのは対立するグループ同士の抗争という、まさに蠍座を象徴する様相になったわけだ。
世の中ではチーマーや半グレ集団などが勃興していた時代である。
そんな中、長州氏が自らの軍団を引き連れて新日本プロレスを脱退したり、前田日明氏なども同士を集め新団体UWFを立ち上げて新日本プロレスを去ったりした。これらはあくまで単独行動ではなく、軍団単位で去ったという流れであり、蠍座の示す「固定関係」という性質が如実に表れている。
その後出戻ったり、また出たり色々あったものの、大きな流れとしての軍団単位という基本構図は、冥王星蠍座時代を通じて長らく続いた。
次世代への布石――蠍座から射手座への転換
そんな中で、徐々に次の時代への布石が起こる。異種格闘技戦などを行って本格的格闘技を目指した、高田延彦氏をトップとするUWFインターが注目されていく。この団体はそれまでのプロレスという枠から脱して、異ジャンルの格闘家と試合を行ない、結果的に次の時代=総合格闘技への流れを作っていくのだった。
1990年代初期のことである。あと少しで冥王星が射手座に移るタイミングだ。
有田氏によると当時、高田延彦氏はプロレス界の絶対的なエースであり、ファンの絶対的な信頼を得ていたという。次々に対戦相手を破り、ファン誰もが高田=人類最強を信じていた時代だった。
ところがそこに、突拍子もない出来事が起こった。アメリカのUFCというケンカのような大会(有田氏いわく)で、ホイス・グレイシーという日本では無名の選手が優勝するのである。当時、メディアでさえその名を知るものはなく「誰それ?」という状態だったという。
ところがこの時ホイスはインタビューで、こともあろうに「私より兄の方が10倍強い」と言ってのけた――その「兄」こそ、400戦無敗伝説(あくまで伝説)のヒクソン・グレイシーだったのは後にわかる。
冥王星・射手座時代――レベルアップ
冥王星は1995年に射手座に入った。
高田延彦氏率いるUWFインターも倒産の憂き目にあい、紆余曲折あった後、1997年に高田延彦vs.ヒクソン・グレイシー戦が実現したのである。その時のイベントこそ、その後隆盛を極める「PRIDE 1」だった。
ガチンコの幕開けである。
しかし、それまで最強と信じられていた高田選手は、この試合であっけなくヒクソンに負けた。1ラウンド終了間際、試合開始から5分も経たない出来事だった。
この事実は、高田選手の勝利を信じて東京ドームに集まった5万人のファンの心を無残に打ち砕いた。会場の誰もが目の前で起こった事実を受け入れられなかったという。当時、東京ドームでリアルタイムで試合を見たというビビる大木氏は、帰りに電車に乗れないほど放心状態に陥り、けっきょく徒歩で帰ったらしい。
この後にもう一度、高田氏はヒクソンに挑むものの、あえなく負ける。ある者はこう言った「プロレスが死んだ日」――ここからプロレスは長らく低迷し、本格ガチンコ格闘技の時代に突入していく。
射手座はレベルアップを示す。
それまで井戸の中で同じメンバーで戦っていた格闘技(プロレス)は、国内外を問わず人種を問わずジャンルを問わず、真に強いものを求めていく時代になるのである。さまざまな選手が本気のNo.1を争う、そんなガチンコの格闘技全盛時代の到来だった。そんな中でPRIDEやK-1が評価されていくのは必然だろう。
この頃に活躍したのが山本KID氏だ。彼はレスリングでオリンピックを目指していたが断念し、プロ格闘家に転向した頃にこの時代の潮流に乗った。
しかしこれさえ、冥王星が山羊座に入ると、その流れは変わる。
冥王星・山羊座時代(現在)――組織力
山羊座は組織を示す。
K-1は元プロ野球選手や芸人(無名の頃のオードリー春日俊彰)なども参戦させたり、女子部門を作ったりしたが、その頃にはすでに組織としての勢いを失っており、最終的に経営不振に陥り倒産した。最強だったPRIDEは、コンプライアンスの問題(つまり組織力の脆さ)によってその立場を失った。
それは冥王星射手座時代の終わりを示すものだった。
それに代わって、低迷時代に地道に地道に立ち直りを図ってきたプロレスが、個人競技としてでなく組織ぐるみの戦略で息を吹き返してきたのである。アメリカのWWEもいま大変な盛り上がりを見せている。
それまでのガチンコ総合格闘技は、今やUFC一強になった。しかしこれはUFC on FOXのような地方大会やThe Ultimate Fighter Finaleなど各レベルを統合して行われているもので、実は組織力なのである。
こうしてプロ格闘技は、冥王星の動きとともにその流れが変遷していったのは興味深い。
そして未来へ――実は格闘技だけじゃない
これまで書いてきた例で言えば、冥王星が次のサインに移る少し前から、なにかのきっかけが起こり流れを変えてきた。ただそれは瞬時に切り替わることではなく、一見自然に、徐々に変化していくために一般には気づかないが、わかった頃には時代が変わっている――それが冥王星の影響力なのだ。
今回は格闘技になぞらえてみたが、実は一般社会こそ冥王星の影響を強く受けている。
1910年代、冥王星が蟹座に入るとともに第一次世界大戦が始まった。しかしその流れは、その前から徐々に始まっている。
そして1939年、冥王星が獅子座に入ると、ドイツがポーランドに侵攻して第二次世界大戦が始まった。その大戦で日本は、いかにも獅子座っぽい兵器=原爆を落とされて負けた。
乙女座冥王星の時代は、働け働けの時代だった。実務の乙女座である。
次世代の冥王星が作る時代は?
さて、次の冥王星=水瓶座時代はどのような世の中の流れになっていくのか、それはこれまでの占星術ロジックからして、今からでもある程度予想できることである。
少なくとも私には、日本に明るい未来が待っているとは思えないのだが、どのような準備をしてその世代を生きるのか、これから重要になってくるように思う。
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