ダース・ベイダー役の俳優が死去
スター・ウォーズのオリジナル3部作で「ダース・ベイダー」を演じたデヴィッド・プラウズ氏が、2020年11月28日に85才で亡くなった。
映画「スター・ウォーズ(Star Wars)」シリーズでダース・ベイダー(Darth Vader)を演じた英俳優デヴィッド・プラウズ(David Prowse)さんが28日、死去した。85歳。https://t.co/kVAYwyTRbV
— AFPBB News (@afpbbcom) November 29, 2020
プラウズ氏は11月に入ってから新型コロナウィルスに感染し、闘病の末亡くなったとのことだ。また最近はアルツハイマー病にも苦しんでいたという。
ご冥福を祈るとともに、少々複雑な思いもある。それについて書いてみる。
「No, I am your father.」
スター・ウォーズのオリジナル3部作(エピソード4~6)は、個人的にリアルタイムで映画館で見た時よりも、後にイッキ見した時の方がそのストーリーの深さに感銘を受けた。
ガキの頃に単純に宇宙SFアクション映画と思っていたものは、感受性が成長した目線で通して見た時、別なものになっていた。
極秘セリフ
ネタバレになるが『エピソード5/帝国の逆襲』の中でダース・ベイダーが、主人公のルーク・スカイウォーカーに「No, I am your father.(違う、私がお前の父親なのだ)」と言い放つシーンは、作品全体を通じての核になるシーンであり、初めて見た時は衝撃以外の何ものでもなかった。
このセリフは撮影中は極秘にされていたという。公開前のリークを防ぐため別の台本で撮影し、出演者や撮影関係者にバレないようにしていたようだ。撮影後に上のセリフに吹き替えられている。
不信感のはじまり?
ご存知のようにダース・ベイダーの声は、俳優ジェームズ・アール・ジョーンズ氏が吹き替えをしている。あの低く響く迫力のある声はジョーンズ氏のものであり、プラウズ氏の声はもっと高く、響きがちょっと軽い。また独特の訛りもあったようだ。
Footage of David Prowse doing Darth Vader's dialogue on set before being dubbed over by James Earl Jones pic.twitter.com/w15ocTNCTa
— Samuel J. May (@sjmay92) November 29, 2020
作品の完成後、セリフが変わっているのを見てプラウズ氏は驚いていたという。
思えばこのときから、制作サイドとの確執があったかもしれない。
確執が決定的なものに
別の俳優にチェンジ
これもネタバレだが、オリジナル3部作の完結編『エピソード6/ジェダイの帰還』で、最後ダース・ベイダーがマスクを取って素顔を見せるシーンがある。このときに、中の人をプラウズ氏でなく別の俳優セバスチャン・ショウ氏が演じた。
I was right – it was an actor named Sebastian Shawhttps://t.co/FSx025PNyG
— Phlip (@Pen_Bird) November 29, 2020
制作側の表向きの理由は(プラウズ氏は)「ベイダーとしては若すぎる」というものだったが、当のプラウズ氏にしてみれば、なぜ俺じゃないんだという思いもあったろう。これも確執の要因の一つになった。
蛇足だがこのマスクを取った時のダース・ベイダー役は、当初は三船敏郎氏にオファーされた。残念ながら三船氏は断っているが。
ルーカスフィルムとのわだかまり
また公開前に、最後ダース・ベイダーが死ぬというストーリーがタブロイド紙にすっぱ抜かれた。
これをリークしたのがプラウズ氏だったとの説が流れ(プラウズ氏は否定)、とうとう制作サイドとプラウズ氏の確執が決定的なものになってしまった。
積もり積もったわだかまりによって、プラウズ氏はルーカスフィルムから出禁状態になってしまう。
なかったことに
スター・ウォーズファンの信心深いところは、たとえ中の人であろうが声だけの人であろうが、出演している演者には一定のリスペクトがあることだ(新三部作以降を除く)。それが、スター・ウォーズのキャラクタービジネスの成功につながっている。
その中でも、ダース・ベイダーの存在感と人気は圧倒的だ。オリジナル3部作のあとに作られた作品で、ダース・ベイダーが登場した時のオーラは、他のどのキャラクターにも代えがたい。全部かっさらってしまう。
そのようなキャラクターだけに、本来ならファンから最上級の賛辞を持って迎えられていたはず。それが、まるで無かったことのようにされてしまったのである。
キャリア
デビッド・プラウズ氏がダース・ベイダー役に選ばれたのは、その恵まれた体格からだったろう。身長が2m近くあり、イギリスのウェイトリフティング大会のヘビー級優勝者でもある。映画「スーパーマン」で、主役のクリストファー・リーブ氏のトレーナーにも抜擢されたようだ。
俳優としてはフランケンシュタイン役や、1971年スタンリー・キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』でボディガード役をやっている。
そんな中でのダース・ベイダー役は彼の代表作になるはずだった。後の確執がなければ。
それとプラウズ氏は、ベイダーの肝であるライトセーバーの殺陣が苦手だったようで、闘うシーンはアクション振付師のボブ・アンダーソン氏が代わりに演じている。これも、制作側にとってあまりいい印象をもたらさかなったかも。
けっきょくダース・ベイダーは、中の人・声の人・殺陣の人・素顔の人、全部違う人だったのである。
最後に
以上が、冒頭に書いた「少々複雑な思い」の内容だ。
2015年にプラウズ氏にスポットを当てたドキュメンタリー映画『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』が制作された。この中で、ルーカスフィルムとの確執になった、いくつかの点について描かれているという。
プラウズ氏の胸中、いかばかりだったか。今となっては知る由もない。
R.I.P.
※追悼に、またオリジナル3部作見てみたくなった。
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