アジア人初のスターズ制覇
さて松山英樹選手がマスターズを制覇した。
Japan’s first Masters champion. #themasters
日本人として初のマスターズチャンピオン pic.twitter.com/r9LmakPTbx
— The Masters (@TheMasters) April 11, 2021
PGAメジャー制覇は日本男子プロゴルフ界の長年の悲願だった。だから放送席が全員涙した。長年ゴルフを見続けてきた者ほど、あの涙は理解できた。
ことごとく散ってきた過去
女子の方では、1977年に樋口久子氏が全米女子プロゴルフ選手権で優勝しているし、2019年に渋野日向子選手が全英女子オープンで優勝している。
一方男子の方といえば、これまで名だたるトップレベルと言われる選手達が挑戦してきたが、ことごとく散ってきた。
全盛期にセベ・バレステロスから「世界で五本の指に入る美しいスイング」と言われた中嶋常幸氏、タイガー・ウッズが「世界一美しいスイング」と呼んだ伊沢利光氏、ジャンボ尾崎氏、青木功氏、丸山茂樹氏・・・
日本人男子のメジャー挑戦は、1980年の全米オープンで青木功氏が2位になったのが最高位だった。このときは”帝王”と呼ばれたジャック・ニクラウスとの一騎打ちで、「バルタスロールの死闘」と言われる伝説的な戦いだった。
のちにニクラウスは「アオキの100ヤード以内は世界一だ」と言ったとか。
マスターズという魔物
PGAツアーの四大メジャー(全米プロ・全米オープン・全英オープン・マスターズ)の中で、マスターズはある種の特殊な位置にあると思う。
他は会場が変わるのに対し、マスターズだけは米ジョージア州にあるオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブだけで行われるからだが、それだけではない人を惹きつけて魅了する何かがある。
優勝者に贈られるグリーン・ジャケット、前年の優勝者がメニューを考えるチャンピオンズ・ディナー、観客のことを「ギャラリー」と呼ばず「パトロン」と呼ぶ、歴代優勝者はマスターズに生涯出場できる、そして何よりオーガスタというコース。
その難易度から「オーガスタには女神がいる」といわれ、女神が微笑んだ者のみが、マスターズの栄冠を手にすることが出来る。
今回も最終日、松山・シャウフェレ組の15番ホールと16番ホールで起こったドラマは、オーガスタの女神が「最後の試練を与えてあげる」と言ったような気がした。そして「この試練を克服した者が、今回のチャンピオンよ」とでも言っているかのような。
巡り合わせ
ただ全体を通じては、松山選手には女神が微笑んでいたような。林に打ち込みそうになっても、木に当たって打ちやすいところに出てきたり、偶然のラッキーに恵まれる場面が何度かあった。
2011年、東北福祉大の学生の時にマスターズ出場権を手に入れながら、東日本大震災に見舞われ出場を躊躇した。しかし周囲に背中を押されて出場、ローアマ(アマチュアで最高位)になっている。
今年はそこから10年目という節目・そして10回目の挑戦、これもなにかの縁・巡り合わせのようなものがあったのか。
退路を断つ
気がつけば松山選手が米ツアーにフル参戦して以降、ずっとランキング30位以内をキープしてる。日本でいくらトップレベルの選手でも、海外メジャーはスポット参戦ではなかなか結果が出ない。環境やコースが違うし、何より戦う相手のレベルは、世界のトップ達だ。
2015年には日本のシード権を放棄した。
国内で年間5試合出場しなければ、シード権を失う。ちょくちょく帰国して日本の大会に出る選手はいるが、それはシード権を確保しておくため。海外で結果が出なければ、日本に戻ればいいという、一種の保険をかけておくためだ。これが甘えのようなものになるかもしれない。
逆に言えば、それが海外フル参戦への足かせになる。日本のシード権を失ってまで踏み切れないのだ。それが、システム的に日本人選手が海外ツアーで活躍できない理由の一つだと思う。
しかし松山選手はあえて退路を断った。
最後に
松山選手の命、金水傷官が火を見ている。なるほど納得した。
無骨ながらも自分を磨くことを苦とせず、磨いてさらに磨くんだろう。もし慢心して磨くことを忘れてしまえば、輝きを失う。
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