注目「ゴンザレス対Google」最高裁が審理
以前も取り上げましたが、米最高裁で注目の裁判が始まります。
「ゴンザレス対Google」裁判は、今予定されている最高裁の裁判の中でもトップクラスに注目されているもので、過去何年かの中でも最大のインターネットをめぐる裁判だと言われています。
この裁判の行方によっては、ふだん我々が関わっているインターネットの世界が、根底から覆る可能性があると言えるかもしれません。
さてどうなるか。
The US Supreme Court could rewrite the rules of the internet with a challenge to the liability shield cherished by online companies https://t.co/Itu4YVnd4e
— Bloomberg (@business) February 16, 2023
セクション230による保護
以前もお伝えしたように、この「ゴンザレス対Google」裁判の争点となるものは「セクション230」=通信品位法第230条であり、この裁判如何によってはその存在価値が問われるものになります。
詳しくは↑の記事を読んでいただければと思いますが「ゴンザレス対Google」裁判は、2015年11月にパリで起きた「ISIS同時多発テロ」により死亡した23才の女性、ノヘミ・ゴンザレス氏の遺族が起こした訴訟です。
2016年に父親のレイナルド・ゴンザレス氏がカリフォルニア州の連邦地裁に提訴し、一審で裁判所はセクション230によりGoogleを支持する判決を下しました。つまり遺族は敗訴です。
上告された第9巡回区控訴裁判所でも、一審の判決を支持しています。
Googleなどプラットフォームを提供する企業は、これまでセクション230によって守られてきました。
簡単に言えばセクション230は「プラットフォーム側は責任を問われない」とするものです。つまりプラットフォームは情報発信者ではなく単なる配信者である、という位置付けを定義しています。
アルゴリズムによる誘導
最高裁に上告したゴンザレス氏の遺族は、ISISテロ実行犯がGoogleが運営するYoutubeの動画を視て過激化したと主張しており、Youtubeのアルゴリズムが推奨した動画が彼らに影響を与えたため、Googleはその責任を取るべきだ、としています。
つまりアルゴリズムはセクション230の適用外だ、との主張です。
皆さんも経験あると思いますが、ツイッターやYoutubeを利用するとオススメ投稿が表示されます。これはアルゴリズムによって制御されており、そのプログラムコードを作ったのはプラットフォーム側です。
アルゴリズムは、ユーザーの過去の閲覧履歴や検索ワードなどを追跡して好みや思想を判断し、「こいつが好きそうだな」というものを勝手に選んでオススメしてきます。また広告などもそれに合わせて表示してきます。その意味では個人情報の収集になるかもしれません。
人によってはそれが知りたい情報にたどり着く早道になる場合もありますが、一方で押しつけがましさに嫌な思いをする人もいるでしょう。
いずれにしても、追跡されるのは気持ちのいいものではありません。
セクション230を見直す時期が来ている?
そもそもセクション230自体、まだインターネットが黎明期だった1996年に制定されたものであり、それこそYoutubeやツイッターなど存在しなかった時代に作られたルールです。その時代に、アルゴリズムによるオススメなどは存在していなかったと思います。
その意味では、あらためてその存在自体が見直される転換点に来ているかもしれません。
それを示唆しているのは最高裁判事の一人クラレンス・トーマス判事で、トーマス判事はセクション230条を見直し、再評価するべき時期が来ていると主張していました。
「議会がこの法律(セクション230)を制定したとき、今日の主要なインターネット・プラットフォームのほとんどは存在していなかった」とトーマス判事は述べています。
Twitterも訴えられている
2022年4月4日にゴンザレス氏の遺族は最高裁に上告しました。同年10月3日に最高裁は審理に合意しています。
そしてこのあと2023年2月21日に口頭弁論が行われる予定です
同じような裁判「Twitter対タムネ」の口頭弁論も2月22日に予定されています。
こちらは、TwitterがISISの成長を幇助したと訴えられたもので、2017年にトルコのイスタンブールのナイトクラブ「レイナ」で起きた銃撃テロの犠牲者の遺族が起こした訴訟です。この裁判もセクション230が争点になります。
奇しくも同時期に、セクション230が争点になる2つの裁判が最高裁で審理されるのは興味深いことです。
時代の流れが要求しているのかもしれません。
ビッグテック企業は必死
「ゴンザレス対Google」の最高裁の判決は、今年秋頃になると予想されています。
この裁判で、もしGoogle側が負けるようなことになれば、今後プラットフォームは訴訟の嵐になる可能性があります。これまではセクション230によって責任を免れていたものが、一気に降りかかってくる事になるからです。
「オススメ記事に誘導されて損害を被ったー」とユーザーが裁判所に殺到する未来が待っているとしたら・・・そうなると莫大な訴訟費用が必要になる。
またそれはGoogleだけに及ばず、ほぼ全てのプラットフォーム企業がアルゴリズムを使用しているため、なんとしてでも阻止したいはずです。
一方で、そもそも原告側には悲劇的な死者が出ていますので、そこを最高裁はどう判断するのか。
なかなか難しい判断になりそうであり、それも注目されるポイントでしょう。
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