トランプ大逆転勝利なるか?――ジャック・スミス特別検察官の任命は違憲であり無効か

ジャック・スミス/United States Department of Justice, Public domain, via Wikimedia Commons

トランプに大逆転勝利の可能性

はたしてトランプ陣営にとって大逆転勝利となるのか。

今、ネットで物議になっています。

現在ドナルド・トランプ氏はいくつかの起訴に直面していますが、そのうちの一つがジャック・スミス特別検察官による刑事起訴です。

  • 2021年1月6日米連邦議会議事堂襲撃事件に関するドナルド・トランプの行動
  • マー・ア・ラーゴ邸での機密文書を含む政府記録のトランプによる取り扱いと保管に関する容疑

この2つについて、メリック・ガーランド司法長官は2022年11月にジャック・スミス氏を特別検査官に任命し、捜査権限を付与しました。特別検察官は、通常の検察官より権限が拡大されます。

これを受けてスミス特別検察官は今年8月1日、2020年大統領選挙の結果を覆そうとした容疑と、議会議事堂襲撃事件での行動に関する4件の訴因でトランプ氏その他を起訴しました。

起訴状には「米国を詐取する陰謀」「公的手続きを妨害する陰謀」「公的手続きの妨害と妨害未遂」「権利に対する陰謀」などが含まれています。↓

またもやトランプが起訴――ところが2024大統領選ライバルが司法省を逆提訴

2023年8月2日

ジャック・スミスの特別検察官任命は違憲

ところが、そもそもガーランド司法長官による任命自体が、違憲である可能性が浮上しました。

元司法長官を含む法律専門家によると、ジャック・スミス氏の特別検察官に任命されたのは「違憲である」といい、この件で連邦最高裁に第三者意見(アミカス・ブリーフ)が提出されました。

アミカス・ブリーフとは、法廷の当事者ではない者が、争点に関する情報や知識を提供する文書のことです。

もし最高裁がこれを認めれば、ガーランド司法長官はとんでもないミスを犯したことになり、スミス氏は権限を失うどころか、トランプ氏への法的起訴も無効となる可能性がある。

スミス特別検察官は焦っている

現在、ジャック・スミス特別検察官は、なんとしてでもこの裁判を2024年3月4日に行い、一刻も早くトランプ氏の有罪判決を望んでいるという。

その理由は、翌3月5日がスーパーチューズデーだからです。

スーパーチューズデー(Super Tuesday)とは、毎年その時期に行われるアメリカ大統領予備選挙の日のことで、最も多くの州で予備選挙と党員集会が行われる重要な日です。

なのでスミス氏としては、この日までにどうしても裁判を間に合わせ、トランプ氏にダメージを与えたい。なぜなら現在、トランプ氏の支持率がどんどん上がっているからです。日に日にバイデンには勝ち目がなくなってきている。

だとすれば、トランプを有罪にして刑務所に送り込みたい。

しかし一方で、裁判前の手続きが複雑さを増しており、その日に開催できるかが微妙になっています。

そのため現在スミス特別検察官は、トランプ氏に免責特権があるかどうかについての迅速な判決を下すよう最高裁に要請しました。

これに対してトランプ側のアリーナ・ハバ弁護士は、スミス氏が焦っていると語っています。

「スミス氏側には、ある種の本当の危機感がある」↓

元司法長官を含む専門家3人が申し立て

そんな中で、トランプ氏に「思わぬ朗報」となるかもしれない件が浮上しました。それが上に書いたアミカス・ブリーフです。

このアミカス・ブリーフは12月20日に、エド・ミース元司法長官、法学教授スティーブン・カラブレシ氏、憲法学者ゲーリー・ローソン氏の3名によって最高裁判所に提出されました。

この中で特にカラブレシ氏は、以前から反トランプだったにも関わらずこの意見書を書いているというのは、純粋にこれが法に反しているということでしょう。

アミカス・ブリーフによると、メリック・ガーランド司法長官がジャック・スミス氏を特別検察官に任命したのは”違憲”であるため、この審査は無効だと主張しています。

憲法は、特別検察官になるには本来は大統領によって指名され、上院によって承認された者でなければならない(連邦検察官のような)と規定しており、単なる私人だったスミス氏にはその資格がないため、任命自体が違法であり、そこから派生した全ての法的措置も違法だというのです。

ジャック・スミスとは何者か

ジャック・スミス氏は、2017年9月21日までテネシー州中部地区の連邦検事でしたが、辞任し、ホスピタルコーポレーション・オブ・アメリカという私企業の副社長兼訴訟責任者になっていました。

その後2018年5月に、コソボ紛争の戦争犯罪を捜査する「コソボ特別法廷」の主任検察官に任命されましたが、これはコソボ共和国とEUの管轄であり、オランダのハーグの特別法廷で行われたものです。

というのもスミス氏は、2008年~2010年までハーグの国際刑事裁判所の検察局に務めており、その後米国に戻り、米司法省に勤めているのです。

つまりガーランド司法長官が任命した時点では、米国の検事でも役人でもなかった。

例えば、ロシアゲートの特別検察官に任命されたジョン・ダーラム氏はもともとコネチカット州の連邦検事だし、ハンター・バイデンの一連の調査における特別検察官デビッド・ワイス氏もデラウェア州の連邦検事です。

アミカス・ブリーフの中で「連邦政府の権威を身につけていないスミスは、裸の皇帝の現代的な例である」と述べており、

「不適切に任命された彼は、ブライス・ハーパー、テイラー・スウィフト、ジェフ・ベゾス以上に、この法廷で合衆国を代表する権限を持たない」と書かれています。

(実際のアミカス・ブリーフ↓)
https://www.supremecourt.gov/DocketPDF/23/23-624/293864/20231220140217967_US%20v.%20Trump%20amicus%20final.pdf

スミスの行ってきたことは全て無効だ

補足としてカラブレシ氏はReasonの中で、以下のように述べています。

最高裁から見れば、ジャック・スミスは合衆国の役人ではなく、私人である。 立件の問題は、当事者から提起される必要はなく、放棄することもできない。 最高裁判事は、自発的に対処しなければならない。
(中略)
事実として、ジャック・スミスが2022年11月18日に任命されて以来、特別検察官として行ってきたことはすべて違憲であり、無効である。

ジャック・スミスは私人であるため、現在刑務所にいる者、あるいは司法取引の対象となっている者は、釈放を求めることができる。

フロリダ地裁の機密文書事件の判事は第11巡回区の管轄下にあり、DC巡回区の判例に拘束されることはない。 彼女の前の事件の訴訟当事者であれば誰でも、ジャック・スミスは合法的に任命された合衆国公務員ではないと主張することができる。

さて大逆転は起こるのか。


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