テレグラム開発者パーヴェル・ドゥーロフ
米国で悪名高きFISA法の延長が可決されました。これでまた米政府は令状なしに国民をスパイし続けることが可能になります。しかしマイク・ジョンソン下院議長は就任当初に比べてどんどん左傾化しているのはいかがなものか。共和党から議長解任動議が出されるとの話も出ています。
ともあれそんなタイミングで、元FOXニュースのタッカー・カールソン氏のインタビューシリーズに、Telegram(テレグラム)創設者のパーヴェル・ドゥーロフ氏が登場して興味深い話をしています。
インタビューの中でドゥーロフ氏は、ロシア政府からはユーザーの個人テータを提供するよう圧力をかけられたため、ロシアから逃げたと語りました。逃亡したドゥーロフ氏は現在、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイに移っているという。
また米FBIがテレグラムのユーザーをスパイしようと画策したと暴露しました。
しかし現在、ネット上の言論を支配しているのはこうした政府権力ではなく、ビッグテック企業、特にGoogleとAppleだと主張しています。
Ep. 94 The social media app Telegram has over 900 million users around the world. Its founder Pavel Durov sat down with us at his offices in Dubai for his first on-camera interview in almost a decade. pic.twitter.com/NEb3KzWOg8
— Tucker Carlson (@TuckerCarlson) April 16, 2024
共産主義と自由主義を体験
秘匿性の高いことで知られる暗号化メッセージアプリ「テレグラム」は、ルフィ事件など闇バイトなどに使用されていることで日本ではグレーなイメージがありますが、プライバシー保護に特化しているという点では今問題になっているLINEなどよりはよっぽど信頼性がある気がします。
そんな秘匿性の高いアプリを開発する事になったのは、ドゥーロフ氏がこれまでの人生で体験してきたことがきっかけになっているという。
パーヴェル・ドゥーロフ氏は、1984年に旧ソ連のレニングラード(現ロシアのサンクトペテルブルク)で生まれたが、4歳の時に父親の仕事の関係でイタリアのトリノに移り、そこで幼少期のほとんどを過ごしたとのこと。
つまりソ連の共産主義と、イタリアの自由主義の両方を体験していた。それが彼の考えの根本になっていると思えます。
実際インタビューの中でドゥーロフ氏は(イタリアの)「資本主義・自由市場のシステムの方がいいと思った」と述べた。
彼はイタリアの学校に通ったが、ソ連が崩壊した時に戻ることになったという。それは父親がサンクトペテルブルク国立大学の学部を運営するオファーがあったからだという。ちなみに父親は古代ローマ文学を扱う学者だとのこと。
母親はウクライナ人であり、このあたりの複雑さもテレグラムの開発に関係しているかもしれない。
最初のSNSアプリ「VK」
イタリアに移った直後はまったくイタリア語がわからなかったと言うが、2年目が終わる頃にはクラスで成績が一番になっていたという。
ドゥーロフ氏の兄も秀才で、国際オリンピックで数学の世界チャンピオンになっているとか。兄弟2人はプログラミングを覚え、大学ではWebサイトを作り、会社を立ち上げたという。
21歳の時にイリヤ・ペレコプスキー氏と共同で作った会社VKontakteは「ロシア版Facebook」と呼ばれるSNSで、VKは1億人のユーザーを有する東欧最大のSNSプラットフォームに成長したようです。
それにはドゥーロフ氏がイタリアで培った「言論の自由」の価値観が背景にあるという。
VKはロシア、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンなど旧ソ連諸国最大のSNSとなり、そこでロシア政府に対する抗議コミュニティが持たれることになっていく。
それに対してロシア政府は、VKプラットフォーム上での反政府コミュニティを禁止するよう圧力をかけてきたが、ドゥーロフ氏らは拒否したという。
ロシア政府の圧力
ドゥーロフ氏は言論の自由と集会の自由を守ろうとしたが、その一方でロシア政府とは緊張が高まっていく。
2013年のウクライナの抗議デモ(マイダン蜂起)の連絡にVKが使われたのは、Facebookがカラー革命に使われたのと全く同じ構図です。
ドゥーロフ氏らはロシア政府から、抗議デモの主催者の個人データをよこせと要求を受けたという。それにも拒否したが、とうとう最後通牒を受けることになる。
それはデータを渡すか、会社の株を売って引退するかの二択でした。ドゥーロフ氏は後者を選び、ロシアを離れることに。
まだロシアにいる時、自宅に武装した警官が押し入ってきたという。それを兄に伝えようと思ったが、どの通信手段も安全ではなかった。
それが、暗号化メッセージアプリを開発するきっかけになった。上に書いたようにドゥーロフ氏の兄は頭が良く、数学の博士号を2つ持っていて暗号化の専門家だという。
米国はテレグラムをスパイしようとした
ロシアを離れたドゥーロフ氏は、ベルリン、ロンドン、シンガポール、サンフランシスコなど様々な場所に行ってみたが、どこも定住する場所ではなかった。官僚的なハードルを超えるのが難しかったからだという。
サンフランシスコはIT企業が集まっているので都合がいいと思ったが、当時のツイッター社のジャック・ドーシーCEOを訪問した後、暴漢に襲われたという。このとき思わずドーシー氏に会ったことをツイートしてしまったことが不幸を招いた。
いずれにしても、サンフランシスコはいるべき場所ではない事がわかった。
しかしその後アメリカにテレグラムのエンジニアを連れて行った時、サイバーセキュリティ担当官やエージェントと呼ばれる人たちが、ドゥーロフ氏に隠れてこっそりそのエンジニアを雇おうとしたという。
いわく、彼らはどのオープンソースライブラリがクライアント側でテレグラムのアプリに統合されているかを知りたがっており、特定のオープンソースツールを使うようエンジニアを説得しようとしていたという。
それはおそらくテレグラムにバックドアを仕込んでユーザーをスパイしたがっていたのだと。
ドゥーロフ氏自身、アメリカに行くたびに空港でFBI捜査官が待っていて、質問攻めに遭うのだという。
FBIはテレグラムを知りたがっていて、アプリをコントロールするためにドゥーロフ氏と関係を持とうと思っていたと言っている。
UAEは最適だ
現在ドゥーロフ氏はUAEで活動している。すでに移って7年になるんだとか。
なぜならビジネスのしやすさが圧倒的で、世界中のどこからでも人を雇うことができ、滞在許可が下りやすいからだという。
また税金も安く、インフラも整っていて、最も大事な事は「中立」だということ。UAEはどの先進国とも同盟を結んでおらず、ユーザーのプライバシーを守るのに最適だからだと。
しかもUAE政府から圧力を受けたこともゼロだと言っている。
民主党「1月6日事件のデータをよこせ」
興味深いことにドゥーロフ氏は、米民主党から1月6日国会議事堂事件に関わるすべてのデータを要求されたと言っています。
民主党は1月6日国会議事堂事件に参加した保守派を逮捕しまくっており、刑務所に入れている。
ドゥーロフ氏は民主党から「この要求に応じない場合は合衆国憲法に違反することになる」と脅されたという。
その2週間後、今度は共和党から「データを渡せば合衆国憲法に違反することになる」という書簡を受け取ったのだとか。
弁護士に相談し、けっきょく両方とも無視することにしたとのこと。
しかしテレグラムに対する最大の圧力は「政府からではない」という。
最大の圧力はAppleとGoogleだ
ドゥーロフ氏によれば、最大の圧力は政府ではなく、AppleとGoogleだと言っている。
この2つは、スマートフォンで読めるもの、アクセスできるものは何でもセンサー(検閲)にかけることができるからだという。
AppleとGoogleは自分たちのガイドラインに関してはあまり妥協せず、もしコンテンツが彼らのルールに反すると考えるなら、ルールに従うよう忠告され、それでも従わないのなら彼らのストアから排除されるとのこと。
そしてそれに反対を示すのは難しいという。
最優先事項は「自由」
テレグラムは外部資本はゼロで、ドゥーロフ氏が100%所有しているという。
それは独立した存在でいたかったからで、投資者の欲することとは必ずしも一致しないとわかっていたからだと言っている。
またドゥーロフ氏自身、何億もの資産を持っているが、それでプライベートジェットを持つわけでもなく、高級ヨットを持つわけでもなく、島や不動産を買うわけでもなく、そういうライフスタイルは自分には合わないと語った。
ドゥーロフ氏自身にとって最優先事項は「自由」であり、モノを買うと物理的な場所に縛られ、時間を費やしてしまい、テレグラムに集中できないという。
実際には3年前に社債を発行したことはあったが、所有権も議決権も誰にも与えず、効率を一番重視していると述べた。
イーロン・マスク
ドゥーロフ氏は「間違いなくイーロンがツイッターを買収したことは素晴らしい」という。
その理由は「イノベーション」で、Xはいろいろなことに挑戦している中で、いくつかは失敗に終わるだろうし、いくつかはうまくいくだろうけど、「少なくとも彼らはイノベーションを起こそうとしている」と言っている。
これは過去10年間他ほかのSNSではなかったことで、こういうことをする企業がもっと増えるべきだと述べた。
ドゥーロフ氏はソ連で生まれたことや、母親がウクライナ人であること、イタリアで育ったことなどから、自由の大事さというのを実感してきたのでしょう。
そのために祖国を捨てて自由を選んだ。そんな中で生まれたのがテレグラムだった。金目当てではなく、ユーザーを監視することもない。
なのになぜか日本では犯罪者が使うアプリというイメージが刷り込まれている。タッカー・カールソン氏はドゥーロフ氏のことを「もっとアメリカで英雄扱いされてもいい」と言ってます。
けっきょく日本ではテレグラムにグレーで犯罪の印象が刷り込まれているのは、国民に使わせたくないからなのかと思ってしまいますが。
すぐ個人情報が流出するようなどこぞのアプリとは、レベルから何から段違いです。
個人情報流出問題でLINEヤフーに2度目の行政指導 対策不十分と判断 https://t.co/qqmACmHovX
総務省は3月、LINEヤフーに1度目の行政指導を実施した。主要株主で、システムの運用を委託する韓国IT大手のネイバーとの資本関係を含め、経営体制の抜本的な見直しを求めた。
— 産経ニュース (@Sankei_news) April 16, 2024
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