マッカーシー下院議長が史上初の解任――次の下院議長候補は誰だ? まさかのあの大物?

U.S. Department of Agriculture, Public domain, via Wikimedia Commons

マッカーシー下院議長が解任、史上初

今日はこのニュースが駆け巡っております。

ケビン・マッカーシー下院議長が解任されました。米国議会史上初の出来事だそう。

まあ下院議長と言えば、大統領、副大統領(=上院議長)に次ぐ米国3番目の役職ですから、これは非常事態と言えるかもしれない。

個人的にこれは、将来起こりえることの予兆が早くも出始めたなという印象です。以前から書いてきたように、次の時代は「分断・分裂」の時代であり、そしてもう一つ言えるのは、議会に混乱や波乱が起こる時代になると思うからです。それが水瓶座時代。

ともあれ現地10月3日、共和党員8人+民主党員208人が解任に賛成し、216対210でマッカーシー氏の解任が決議されました。

共和党で解任に賛成したのは、マット・ゲーツ(フロリダ州)、アンディ・ビッグス(アリゾナ州)、イーライ・クレーン(アリゾナ州)、ケン・バック(コロラド州)、ティム・バーチェット(テネシー州)、ボブ・グッド(ヴァージニア州)、ナンシー・メイス(サウスカロライナ州)、マット・ローゼンデール(モンタナ州)の8人。

まだ新年度の予算が決まっておらず、とりあえず政府閉鎖を回避するための45日間の暫定予算が通っただけのタイミングで、これから本格的な議論がなされる中での議長解任ですから、波乱必至かもしれない。

なぜこのようなことが起きたか

世間では「強硬保守派の反乱」とか「共和党の内紛」とか報じられるかもしれませんが、そもそもなぜこのような事が起きたかというと、今年1月にマッカーシー氏を議長の座に就かせた時の約束があったからです。

1月の下院議長選挙は15回も投票が行われたほど、もつれにもつれ、結局マッカーシー氏が妥協案としていくつかの条件を提示したことでなんとか事態が収まり、下院議長のイスを手に入れたのです。↓

もつれた下院議長選び、結局ケビン・マッカーシーが選出――譲歩した条件とは

2023年1月7日

その条件とは

  • 議長不信任案が、たった1人の議員が動議を提出するだけでいい
  • Freedom Caucusのメンバーが下院ルール委員会に席を持つ
  • 裁量的支出の上限
  • 議員の任期制限を設定する法案への投票
  • 国境警備に関する法案の投票
  • 司法省の「武器化」についての委員会を設置

当初からマッカーシー氏はこの約束の下で下院議長に就任したのですが、いざフタを開けてみると支出の上限などが守られず、バイデン政権が不法移民問題やウクライナ支援などでお金をジャブジャブつぎ込み、ついに米国の債務が33兆ドルという過去最高になり、結果的に保守派を裏切ってしまった。

保守派はバイデン政権のイデオロギーによって、国民の税金が止めどもなくつぎ込まれることを阻止したかった。

こうした約束破りに、マット・ゲーツ議員が「もう我慢できない」となって解任動議を出したので、むしろ条件を守ったのはゲーツ議員の方であり、マッカーシー氏の自業自得といえるかもしれません。

まあ何度も書いていますが、マッカーシー氏はカリフォルニアという民主党がガチ強いゴリゴリの左派州の選出なので、左派寄りにならざるを得ない事情があると思います。

そんな中で、今回の解任投票で民主党議員の支持票さえ得られなかったのは”哀れ”なのかもしれない。

個人的な恨み?

一方マッカーシー氏によると、ゲーツ議員が解任動議を出したのは、自分に個人的な恨みがあるからだと主張しました。

現在41歳のゲーツ議員は、性的不品行、違法薬物の使用、資金の不正使用の疑いで下院委員会の調査に直面しているという。ゲーツ氏本人はこれを、マッカーシー氏とその側近の仕業だと主張していたようです。

以前に司法省もゲーツ議員を調査しており、証拠がないと判断したため、2月に取り下げられています。

しかし10月2日にマッカーシー氏は「ゲーツに対する調査を阻止することはできない」と再び主張したため、2人のバトルがヒートアップしました。

これに対してゲーツ議員は、そんなものは”都市伝説だ”と述べ、個人的な恨みでマッカーシー氏の解任動議を出したことを否定しました。

そんな中で共和党内からゲーツ議員を除名しようという声が上がっています。

ニュート・ギングリッチ前下院議長は、ケビン・マッカーシー共和党下院議長を追放しようとしたマット・ゲーツ下院議員を共和党会議から追放し、委員会の割り当てを剥奪すべきだと示唆した。↓

臨時下院議長パトリック・マクヘンリー

いずれにしても下院議長の解任という非常事態になり、さしあたって臨時の下院議長を務めるのはパトリック・マクヘンリー下院議員(ノースカロライナ州選出)になりました。

マクヘンリー議員は、先週可決された政府閉鎖回避のための継続決議の首席交渉官であり、また下院金融サービス委員会の委員長も務めています。

ただマクヘンリー議員はマッカーシー議員の盟友といわれ、議長職解任動議にはもちろん反対票を投じています。そのため、解任が決議された時には怒りでハンマーを叩きつけました。(動画↓)

マクヘンリー議員が臨時下院議長としてまずやった事は、前下院議長のナンシー・ペロシ議員の事務所を明け渡すよう命じたことです。

なんでも上院議員には議事堂内に事務所が割り当てられるのに対し、下院議員が隠れ家的な事務所を持つのはごく少数だという。その中の優遇されていた一人がペロシ氏でした。

マクヘンリー氏はこの日ペロシ氏宛に「明日、部屋を明け渡してください。部屋は鍵を作り直します」と、メールしたという。メールによれば、ペロシ氏の部屋は議長代理が「議長執務室として」再割り当てする予定だとのこと。

次期下院議長候補に挙がる名前

このあと下院共和党は、72時間以内に新議長を指名しないと政治的・広報的大失敗に直面すると予想されており、それは2024年の選挙に影響すると言われています。

もし72時間以内に新しい下院議長が決まらない場合、11月17日までに合意しなければならない予算交渉が進まず、メディアから叩かれる可能性がある。

NBCニュースによると、下院議長選挙は10月11日に行われるとのこと。ただしマッカーシー議員は再出馬しない意向を示しています。

では次の下院議長に名前が挙がっているのは誰か?

  • スティーブ・スカリーズ(ルイジアナ州)下院院内総務。8月下旬に多発性骨髄腫と診断され、化学療法を受けて癌は減少したと発表。
  • ジム・ジョーダン(オハイオ州)下院司法委員会と政府の武器化に関する小委員会の両方で委員長を務める。下院監視・説明責任委員会のメンバーでもある。
  • エリス・ステファニック(ニューヨーク州)下院共和党会議議長
  • トム・エマー(ミネソタ州)
  • ケビン・ヘルン(オクラホマ州)

などが挙がっています。

まさかのトランプ?

そんな中、マッカーシー氏を解任した張本人であるマット・ゲーツ議員は、ドナルド・トランプ氏を下院議長に指名しました。

「私はドナルド・J・トランプ大統領を下院議長に正式に指名する。下院を再び偉大に!」↓

またトロイ・ネールズ議員(テキサス州)も、トランプ氏を下院議長に推薦しました。

「私はドナルド・J・トランプを下院議長に指名する。」↓

まさか・・・と思いきや、FOXニュースのキャスターのショーン・ハニティ氏によると、下院共和党の何人かがドナルド・トランプ氏に次期下院議長就任を打診しているという。

情報筋の話としてハニティ氏は、トランプ氏が共和党を助けるために短期的な役割を引き受けるかもしれないと語っています。

「情報筋によると・・・下院共和党の何人かがドナルド・トランプ前大統領を次期議長に起用するために接触し、努力を始めているとのことだ。トランプ大統領は、必要であれば共和党を助けることに前向きかもしれないと聞いている」

また上で名前が挙がったジム・ジョーダン議員は、トランプ氏が暫定的な下院議長になる可能性について聞かれ、肯定的な意見を述べました。

「彼が必要なのはペンシルベニア通り1600番地(ホワイトハウス)だ。しかし、もし彼が議長になりたければ、それも構わない」↓

「トランプは議員じゃないのに」と思う人もいると思うが、下院議長は必ずしも議員である必要はないようです。

確かに2022年の中間選挙前には、トランプ氏を下院議長にするべきだという声がよく見られました。

たださすがに大統領選挙に向けての選挙活動もあるし、数々の訴訟も抱えている中で、下院議長が務まるのかという疑問はありますが。

さてどうなりますか。


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2023年4月1日
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