『エプスタイン事件』マックスウェル裁判11日目:心理学者の証言はかえって逆効果に?――マックスウェル激怒か

Ghislaine Maxwell, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

クリスマス前に評決が出る可能性も

性犯罪者ジェフリー・エプスタインと共謀したとされるギレーヌ・マックスウェル氏の裁判が米現地12月16日に再開されました。裁判11日目になります。

またしてもこの裁判が早期終了される事が示唆されました。17日金曜日に弁護側の主張が終わる可能性があるとのことです。早ければクリスマス前に評決が出されるかもしれません。

裁判所に提出された文書によるとマックスウェル氏側は35人の証人を準備しているとのことでしたが、そこまで多くならないといわれています。

またこの日、証人のアレキサンダー・ハミルトン氏がコロナ感染により出廷できなくなりました。もしかしたら後でリモートで証言するかもしれないとのことです。

元アシスタント「ギレーヌを本当に尊敬していた」

この日はエプスタインの元アシスタントだったシンバリー・エスピノーサ氏が証言台に立ちました。

エスピノーサ氏は1996年に法務のアシスタントとしてエプスタインに雇われたといいます。その後2002年までマックスウェル氏のエグゼクティブ・アシスタントとして務めました。

ほぼ毎日一緒にいたというエスピノーサ氏は、「ギレーヌを本当に尊敬していた」と述べています。

エプスタインとマックスウェル氏の関係についてはちょっとイチャイチャしていて、カップルのように振る舞っていたと証言しました。

またエプスタインについては「与える人」だといい、いつも慈善団体に寄付しているただの親切な人だと思ったと述べています。

告発者のジェーン氏については最初に会ったとき18才だと思ったといい、ジェーン氏がエプスタイン邸を訪れるときはたいてい母親が一緒で、エプスタインとはファミリーのようだったと述べました。

またエプスタインとマックスウェル氏が未成年に不適切な性的行為をしていることは「見たことがない」と言っています。

しかし検察側の反対尋問で、エスピノーサ氏はエプスタインのどの家でも働いたことはないと認めており(ニューヨークのオフィスで働いていた)、特にパームビーチの家には一度も行ったことがないことを認めました。

裁判の経験豊富な心理学者が証言台に立つ

証言台に立ったもう一人は、ハリウッドのセクハラ大物プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインや、連続殺人犯テッド・バンディ、性的暴行罪で服役し先ごろ判決が覆されて釈放されたコメディアンのビル・コスビー氏、そして無罪を勝ち取ったアメリカンフットボールのO.J.シンプソン氏など、300以上の法廷で証言した実績のある心理学者エリザベス・ロフタス氏でした。

カリフォルニア大学アーバイン校の心理学者兼教授のロフタス氏は「偽りの記憶症候群」=人はどのようにして起こってもいないことを記憶したり、実際とは違うことを記憶したりするのか、というテーマを研究してきたといいます。

「後出しジャンケンや偽情報が証言者の記憶に入り込み、汚染を引き起こす可能性がある」「古い事件であればあるほど、人は事後の暗示によって記憶が汚染される可能性がある」

しかしワインスタインの裁判では、陪審員にそれを納得させることが出来ませんでした。

また検察側から厳しいツッコミが入り、ロフタス氏の信頼性に疑問を投げかけるものになったようです。

心理学者のボロが出た?

ロフタス氏は300以上の法廷証言の実績があるにもかかわらず、検察側から相談を受けたのはたったの5~6回しかなく、実際に検察側の証言台に立ったのは1回のみだと答えました。つまり、この心理学者の証言のほとんどは弁護側=被告側としてのものだったわけです。

ロフタス氏は今回の告発内容については一切触れず、自分がセラピストでもないことを認めました。

さらに、弁護側から1時間600ドル(約6万円)の報酬を得ていると述べました。これは裁判の有罪無罪にかかわらず請求するようです。

反対尋問で検察側は、ロフタス氏が「Witness for the Defense」(弁護のための証人)という本を書いていることについて触れ、「公平な証人」という本は書かないのですか?とツッコみました。

またロフタス氏は重要なポイントを認めています――トラウマを受けた人間は「周辺的なディテール」は忘れても、「核となる記憶」は強く残るものだ、という検察側の主張を認めました。

ギャラのための法廷に立つビジネス心理学者か

前回の記事で書いたように、この裁判を通じて弁護側は告発女性たちの記憶の曖昧さをツッコみ、その牙城を切り崩すのが作戦の一つであり、その裏付けを証言させるために専門家のロフタス氏を呼んだと思われます。

しかしロフタス氏が実際の心理セラピストではなく、ビジネス心理学者であり、今回の告発者の主張に対しては見解を述べず、ギャラのために証言台に立っているということが判明しました。

一説によるとロフタス氏の提唱する「偽りの記憶症候群」は、米国心理学会から批准されていないと言われています。

マックスウェル氏が激昂か

いったん休廷していた裁判が再開され、こんどは弁護側が反論する段階になって、もしかしたら潮目が変わったかもしれません。これまでは検察側の証人がスーパー弁護団からツッコミまれ、押され気味だった印象を受けました。

マックスウェル氏はこのスーパー弁護団の弁護費用に700万ドルを用意したと言われています。とうぜん無罪を勝ち取るためです。

しかしこの日の裁判が終わると、マックスウェル氏が腕を振り回したり弁護士の腕をつかんだりと、目に見えて激昂している様子が見られたと伝えられています。

弁護側はまだあと数名の証人が残っている

このあと弁護側が呼ぶ予定だった証人のうち3名は匿名を希望しており、裁判所に許可を求めましたがアリソン・ネイサン判事は却下しました。ここでもディフェンスがちょっと崩れつつあるのが暗示されています。

しかしまだ裁判は終わったわけではありません。この後の証言によってはまた弁護側が巻き返す可能性も十分ありえます。

いずれにしても弁護側はあと数名の証人を呼ぶ予定で、翌17日に終わるかもしれないと言われています。週明けに伸びる可能性もあるが、だとしても長くはかからないだろうとのことです。

その後最終弁論が行われ、陪審員の審議に入ります。もしスムーズにいけばクリスマス前に評決が出るとのことです。

ではこの辺で失礼します。

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