水原一平「翔平にウソついてました」――ESPNが詳細タイムラインを報じるも、まだ残る疑問

大谷翔平/Ambassador Philip Goldberg, Public domain, via Wikimedia Commons

一平問題、MLBが調査を開始

大谷選手の通訳だった水原一平氏のギャンプル借金が、大谷選手の口座から送金されていた問題で、MLB機構が調査を開始したという。

MLBは3月22日に声明を発表し、「大谷翔平と水原一平の疑惑を報道で知って以来、情報収集を続けている。この日早く、この問題を調査する正式なプロセスを開始した」と述べた。

ESPNによると、カリフォルニア州捜査局もFBIもこの件には関与していないという。

ロサンゼルス警察、ロサンゼルス郡とオレンジ郡の地方検事局の広報担当者は、いずれも捜査はしておらず、連邦政府の問題である可能性が高いと述べているとか。またカリフォルニア州中部地区連邦検事局はコメントを拒否したとのこと。

事件のタイムライン

大谷選手の通訳だった水原一平氏のギャンプル借金が、大谷選手の口座から送金されていた問題で、ESPNがタイムラインをまとめました。

やっぱりこの問題は最初に報じたESPNが詳しい。

https://www.espn.ph/mlb/story/_/id/39784809/dodgers-shohei-ohtani-mizuhara-theft-line

※時間は全てソウル時間(24h表示)
※敬称略

3月18日(月)

8:30

MLB関係者によると、MLB機構のロブ・マンフレッド・コミッショナーは、大谷に関して何かが起きていることを知った。

この関係者によれば、MLBは月曜日の早朝にカリフォルニアの連邦当局に回答を求め始めたが、何の回答も得られなかったという。

3月19日(火)

4:00

ESPNは大谷の代理人であるネズ・バレロに連絡を取り、大谷の名前が2つの電信送金(合計100万ドル)に記載されているなどの情報を入手した。

この送金は9月と10月に南カリフォルニアのマシュー・ボウヤーのブックメーカーに送られたものだった。ESPNは即座に回答しなかった。

6:30

まだ採用されたばかりだった大谷の危機管理広報担当者がESPNの取材に対応した。

その数時間後、危機管理担当とESPNの記者は様々なタイミングで会話を交わし、広報担当は大谷陣営からの情報を入手していると語った。

9:30

”大谷が水原に代わって借金を返した”と初めて広報担当が発表した。

代理人のバレロが水原に会いに行き、水原は「最終的に白状して、それが真実だと言った」、大谷はバレロに”50万ドル単位で水原の借金をカバーしたと話した”という。

報道担当は大谷の言葉を引用した:「ええ、大金を数回送りました。それが私が送れる最大額です。」

広報担当が、大谷が水原を通じてバレロと連絡を取ったと言っているのかどうかは定かではない。

3月20日(水)

10:05

大谷の広報担当者はESPNに対し、ギャンブルによる借金が少なくとも450万ドルに上ることを認めた。

11:30

水原がESPNの記者と90分間電話インタビュー。このインタビューには大谷の広報担当が同席。

水原は、2021年にサンディエゴで行われたポーカーゲームでボウヤーに会ったと語っている。アトランタ・ブレーブスのデビッド・フレッチャー内野手は、元エンゼルスでプレーしていた時に大谷と友人であり、ポーカー・ゲームに同席していたと語っていたが、ノミ屋に水原は紹介していないという。

情報筋によると、ボウヤーはフレッチャーの知人を通じて球団のホテルでのポーカー・ゲームに参加したとのこと。フレッチャーはESPNに対し、以前ゴルフをしていたときに一度だけボウヤーに会ったことがあるが、ボウヤーの組織で賭けをしたことはないと語った。

水原はボウヤーと出会って間もなくクレジットで賭け始め、いくつかのスポーツに賭けたが、野球には賭けなかったという。彼は以前DraftKingsで賭けたことがあり、ボウヤーの経営が違法だとは知らなかったと言った。
(※DraftKings=有名なスポーツベッティング会社で上場企業)

当時、エンゼルスでの彼の年俸は約8万5,000ドルだったが、2022年末までに100万ドル以上を失い、友人や家族からお金を借りていたという。

「翔平には打ち明けられなかった。生活費を稼ぐのが大変だった。私は給料をもらいながら生活していた」「彼のライフスタイルについていかなければならなかった。同時に、このことを彼には言いたくなかった。」

水原の借金は2023年初めには400万ドルに膨れ上がり、その時に大谷に助けを求めたと彼はESPNに語っている。大谷の信頼を失うことを恐れ、また、誰かが家に来るかもしれないという身の危険を感じていたとも。

大谷は明らかに不満そうだったが、助けてくれると言ってくれた。

大谷は金を借りた相手がノミ屋だと知っていたのかと聞かれ、水原は「何も知らなかった」と答えた。「私はただ、借金を返済するために電信を送る必要があると言っただけだ」「彼はそれが違法かどうか聞かなかった」

水原によれば、大谷が借金の支払いに同意した後、2人は大谷のパソコンで大谷の銀行口座にログインし、数ヶ月にわたって1回50万ドルの取引を8、9回行ったという。二人は取引の説明欄に「ローン」と書き加えた。水原は、最終的な支払いは10月に行われたと推定している。

ESPNから、大谷に借金の返済を求めることで、自分自身や大谷を危険にさらすことになると思ったかと尋ねられた水原は、「その時は、二人ともそんなことはまったく考えていなかったと思う」と答えた。

水原は負けた全額を答えず、「妻はいまだに知らない」と言った。

大谷に借金の返済を求めた後、数週間は居心地の悪さと罪悪感を感じたというが、大谷はポジティブだった。「彼は素晴らしい男で、何事もなかったかのように自分の人生を歩んでいった。」

水原は「大谷に返済する」といい、水原によると大谷はギャンブルをしたことがなく、「ひどいものだと思っている」という。

チームメイトがギャンブルをしているのを見て、「なぜこんなことをするんだ?」と言っていたといい、誘われても絶対に行かないと述べた。

19:05

ロサンゼルス・ドジャース対サンディエゴ・パドレスとの2024年シーズン開幕戦。

5-2でドジャースが勝利。大谷は2安打を放ち、試合終了間際にはダグアウトで水原と談笑する姿が見られた。

22:00

あるMLB関係者によれば、水原がESPNに語ったこと=大谷が借金を肩代わりしたこと=をMLB関係者は承知しているという。同関係者によれば、MLBはまだ連邦当局から連絡を受けていないという。

23:00

試合後にドジャースのクラブハウス内でミーティングが開かれ、マーク・ウォルター球団オーナーが選手たちにネガティブな話があることを告げた。

水原は謝罪し、ギャンブル依存症であることを伝えたという。ドジャース幹部のアンドリュー・フリードマンが立ち上がり、大谷が水原の負けをカバーするのを手伝ったと言った。

ホテルに戻る途中、大谷はクラブハウスで何が話されたのか質問し始め、その時大谷の代理人は、大谷が水原の説明を認めなかったとのこと。

ドジャース関係者と大谷の広報担当によれば、大谷の代理人はこの事態に対処している間、大谷とのコミュニケーションを水原に”頼り続けて”おり、水原は大谷に何が起こっているのかを伝えなかったという。

大谷の広報担当によれば、大谷は水曜日に初めて口座からお金がなくなっていることに気づいたとのこと。

3月21日(木)

0:32

大谷の広報担当がESPNに記事を掲載しないようにと言った。

「一平は嘘をついていた。翔平は知らなかった。」

その後ESPNに何度も電話があり、報道担当は、大谷と代理人とのやりとりはすべて水原(の通訳)を経由していたことを強調した。

2:15

ESPNはこの疑惑の深刻さと、証言の矛盾が浮上したことから、大谷の広報担当に窃盗疑惑について公言するよう要求し、30分後に締め切ると伝えた。

大谷の広報担当は、水原は落胆しており、家族に自分の状況を説明する必要があるとした。広報担当は3時までに声明を出すと約束。

3:00

大谷の弁護士バーク・ブレトラー法律事務所がESPNに声明を発表:「最近のメディアからの問い合わせに対応する過程で、翔平が大規模な窃盗の被害に遭っていることが判明した。」

大谷の広報担当はそれ以上の質問には答えず、声明文には窃盗を働いたと思われる人物は明記されていない。

3:30

球団関係者によると、ドジャースは窃盗疑惑を知った直後に水原を解雇。

4:45

ESPNが水原に電話取材。

水原は以前のインタビューでは嘘をついていたと言い、自分が話したことの多くを撤回した。彼はESPNに対し、大谷は彼のギャンブル活動、借金、返済努力について”何も知らなかった”と語った。

窃盗や横領で告発されたことがあるかと聞かれ、コメントしないように言われていると答えたが、誰に言われたかは明言しなかった。

ESPN「大谷はいつこの状況を知ったのか?」

水原「何も答えられないと言われている」

ESPN「それは大谷の代理人から?あなたの代理人から?」

水原「ノー」

ESPN「このように答えるために、何らかのお金をもらっているのか?」

水原「ノー」

ESPN「このようなことを言うように何らかの合意をしたのか?」

水原「ノー」

ESPN「自分の意志か?」

水原「イエス」

ESPN「野球に賭けたのか?」

水原「ノー」

ESPN「翔平に嘘をついたのか?」

水原「イエス」

ESPN「意図的に大谷に誤った情報を与えたことがあるか?」

水原「ノー。そんなことはしたことがない」

ESPN「翔平の口座から本人の知らないうちにお金を引き出したのか?」

水原「(無言)」

5:13

大谷の報道担当によると、ここ数日で実際に起きているのは、水原が通訳という立場で大谷に情報をコントロールできていることであり、大谷は試合後のクラブハウスでのミーティングで新しい通訳が入るまで、何が起きているのか気づいていなかったという。

「彼は何も知らなかったし、問い合わせがあったことも知らなかった。試合後、彼はそれを知った。彼は何が起こっているのか知らなかった。」

ESPN記者の解説

これが事実なら、やっぱり水原氏の発言の手のひら返しが気になるし、その裏に隠れた真意は不明のままです。

補足としてティーシャ・トンプソン記者がESPNの配信番組「First Take」に出演し、水原氏が大谷選手の口座から少なくとも450万ドルの電信送金をブックメーカーに流していたという疑惑の中で、ロサンゼルス・ドジャースから解雇された件について詳しく説明しています。

以下動画より意訳

(ティーシャ・トンプソン記者)
多くの人は大谷は英語が流暢でないと言っているが、彼は英語を十分に理解しており、ミーティングの後に彼が別の通訳を通じて何が起こったのかを聞き、その時に口座のお金が無くなっていることを知ったという。

その時大谷は明らかに話が違うことを理解した。

口座から送られた2回の50万ドルの電信送金に加えて、さらに350万ドルになっている。8~9回にわたって電信送金が行われた。

ESPNは多くの関係者に電話をし、水原にも電話をかけて、「インタビュー中にウソをついたのか?」と聞くと、彼は「イエス」と答えた。

その後一連の質問をすると、大谷は賭博の借金についてまったく知らなかったし、大谷が支払いをしなかったというのも大きな問題だ。

ティーシャ・トンプソン記者:
この連邦捜査は、広範囲にわたって行われている。ブックメイキングについては同じカリフォルニア州中央地区の検察事務所ですでに有罪を認めているが、複数の情報源によればこのブックメイキングについてウェインという名前の男がいたという。

ニックスはすでに有罪を認めて判決を待っているところだが、ブックメイキング活動に関係していた複数の人物も同様に有罪を認めており、そのブックメイキングの一部に関係したアスリートもいたため、我々も注目している。

最近ラスベガスでカジノ幹部のブックメイキング業務に関連した有罪答弁があり、それについて当局に認めているカジノもある。これらのブックメイキング活動について我々が特に調べている人物は誰も起訴されていないが、複数の情報があり、捜査官が調査していると言っている。

MC:
この件で大谷が何らかの関係があるのか疑問があるでしょう。

ティーシャ・トンプソン記者:
ドジャースはこれが大谷がエンゼルスでプレーしていた時から起こったことを知っていたが、まだ解決する必要がある疑問が多数ある。これが現段階での話です。

MC:
視聴者を代表して確認しなければならないのですが、通訳(水原)が彼の口座にアクセスでき、それによって最初の2回の50万ドルと、追加の350万ドルを送金することができたというのは、通訳が何らかの方法で彼からこのお金を騙し取ったと言おうとしているように見える。

通訳がどのようにしてその口座にアクセスできるのかを理解しようとしているのだが、その質問をするのは間違っているのか?これは電信送金がどのように行われたのかという根本的な質問だ。
それともう一つ、これはどれくらいの期間起こっているのか?2021年より前なのか、後なのか。

ティーシャ・トンプソン記者:
水原は私に、ブックメーカーとの最初に会ったのは2021年だったと言った。それは彼の発言だが、その後すぐに賭けが始まったと言った。

最初の90分のインタビューでは、彼は2023年に大谷のところに相談に行ったと主張したが、その後彼はそれを撤回して、大谷は2023年9月と10月の送金を知らなかったと言った。

疑問点

これらの内容を見ると、やはり大谷選手は「違法ギャンブルの借金」ということは知らなかったのかなという印象を受けてもおかしくはない。

ただ一方でESPNの記事によれば、大谷選手は代理人のバレロ氏に「水原の借金をカバーした」と言ったと報じているので、これが事実だとすれば大谷選手は口座からの送金は知っていたという事になる。

そうなると「巨額窃盗に遭った」というのは辻褄が合わない。

さらに広報担当は、大谷選手が「ええ、大金を数回送りました。それが私が送れる最大額だ」と言ったと伝えているので、大谷選手は自分の手で口座から送金した可能性が考えられます。それは最初の水原氏のインタビューと符号する。

しかし広報担当の話にしてもバレロ氏の話にしても、水原氏の通訳を通じて伝えられた可能性があるため、水原氏がストーリーをコントロールできた可能性は否定できない。

実際ESPNは、代理人バレロ氏は大谷選手とのコミュニケーションを水原氏に”頼り続けて”おり、水原氏は大谷選手に何が起こっているかを伝えていなかったと報じている。つまり水原氏はやろうと思えば恣意的に出来たということでしょう。

いずれにしても最初の90分インタビューの話を、水原氏本人も弁護士事務所も覆しているので、何かモヤモヤが残ります。

マネーロンダリングに飛び火?

ニューヨークポストは元連邦検察官ジョシュア・ナフタリス氏の話として、大谷選手が水原氏の450万ドルの借金を肩代わりするために電信送金を承認したことが明らかになれば、マネーロンダリングのカテゴリーに入る可能性があると報じました。

ナフタリス氏はCBSの番組で「多くの場合、隠蔽は犯罪よりも悪い」と述べ、水原氏が説明を覆したことについて「なぜ事実を間違えたのか不思議に思うだろう」とし、

「窃盗と資金隠しの間には大きな違いがあるからだ」と述べたという。

450万ドルという金額は、通訳にとっては明らかに水面下の問題だが、しかしプロのスポーツ選手にとっては失ってもおかしくない金額だ。

そして疑問なのは、彼(大谷)は基本的に通訳を隠れ蓑にしていたのか、ということだ。

https://nypost.com/2024/03/22/sports/shohei-ohtani-may-have-to-worry-about-money-laundering-ex-federal-prosecutor/

下手な憶測は意味がない

結局のところ我々が一番知りたいポイントは

  • 大谷選手が自らの手で送金したのか?という疑問。広報担当は「ええ、大金を数回送りました。それが私が送れる最大額です」という大谷選手の言葉を引用している。
  • じゃないとすれば、水原氏はどのようにして送金できたのか。ESPNの「翔平の口座から本人の知らないうちにお金を引き出したのか?」という質問に対し、水原氏は無言だった。これは真実が言えないからなのか、あるいは誰かに口止めされているのか。
  • 大谷選手が全て知らなかったのというが事実なら、小分けとは言えなぜ400万ドル以上も口座から減っているのに気付かなかったのか。

などなど、これらついてはまだハッキリしていない気がします。

もちろんチーム関係者や弁護士は大谷選手を庇うのが仕事だと思うので、大谷選手にマイナスなことは言わないでしょうから、彼らの言葉はそのまま鵜呑みにはできないのでは。

また「こうだったんじゃないか」「大谷選手はそんなことしないと思う」みたいな憶測や個人の感想はほとんど意味がないと思うので、実際は捜査当局あたりから発表が出てくるのを待つしかないと思うわけですが。

さてどうなるか。

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